「本当?」
「こういうことで、嘘は言わないよ。それに、お前の幸せは邪魔しない。邪魔したら呪われる」
「呪わないよ」
「いや、お前なら有り得る」
「言い掛かりだよ」
「まあ、その話はどうでもいいことで……お前の為に仕事場を斡旋してやったのだから、不平不満を言わずに働くように。あっ! 住む場所は後で何とかするので心配しなくていいよ。で、給料を使い過ぎて返済を怠るなよ。返済が滞ったらどうなるかは、お前が一番わかっているはず」
「月々の給料を支払う前に、生活に支障がない程度の金額を天引きしますのでご安心下さい」
ちゃっかりしているマリサの発言にエイルは吹き出し、ラルフは唖然となってしまう。しかし事前に一定の金額を差し引いておかなければ、金の使い方が荒いラルフは給料を使い果たしてしまう。
また、毎月の借金返済が滞るとクリスティが何と言ってくるかわかったものではない。だから事前に給料を天引きするのは正解で、機転が利くマリサの存在が借金返済の鍵となる。
「前借は?」
「する気なのか」
「足りなくなったら……」
「使い過ぎるなって言ったばかりなのに、何を言っているんだ。それに、お前が働こうとしている場所の給料は結構いいんだぞ。派手に使い込まない限り、金欠になることはないよ。だから、前借なんてするんじゃない。もっと、抱えている借金の額を認識した方がいい」
生きている間に借金全額返済を目指しているエイルにとって「前借」と言っているラルフが信じられなかった。側にマリサがいなければ、エイルは久し振りに全力で上級魔法を使用していただろう。ラルフとのやり取りに、エイルはストレスが蓄積していくのを感じた。
「……帰る」
「もう帰るのか?」
「僕だって仕事がある」
本来であったら親衛隊の仕事を優先しないといけないのだが、ラルフの借金の相手が相手なので悪友の手助けを選択する。それに関してはエイルの父親フレイも容認しており、何よりクローディアの将来を考えると最強の魔女と呼ばれるクリスティの機嫌を損ねるのは得策ではない。


