「私は一体、何を……」
「監視を頼みたい」
「監視……ですか」
エイルが何を言いたいのかわからないマリサは、首を傾げつつどのような意味なのか聞き返す。だが、父親がエイルに対し恭しい態度を取り敬語を用いていたことを思い出す。その瞬間、目の前にいる人物は自分と違う世界に生きている者と気付き、無礼な態度を詫びた。
勿論、これくらいのことでエイルが激昂するほど心が狭い人間ではない。それどころかメルダースでのラルフの無礼な態度と学園を揺るがす迷惑行為で慣れているので、全く気にしてはいない。エイルはそのようにマリサに伝えると、彼女を味方に付けようと画策していく。
「本当に、私で宜しいのでしょうか。私より父に頼む方が、何倍もいいと思われますが……」
「ラルフは貴女を信頼しているので、貴女しかいない。それに、借金が全額返済されないと僕が困る」
「そうですね。借金の返済としないと、相手の方が困ってしまいます。わかりました、お引き受けします。それにお話を聞きますと、借金の相手はメルダースと聞きます。詳しくは存じていませんが、メルダースが凄い学園と聞きます。そのような場所ですので、さぞ厳しいかと……」
「それ、正解」
「でしたら、尚更です」
「貴女のような方で、良かった。ラルフはメルダースを卒業していますが、肝心な部分は駄目でして……」
「頑張ります」
「有難う。期待しているよ」
これにより、水晶発掘場所で働いている全員を味方にすることができた。何かの間違いでラルフが不平不満を言い出し借金返済を諦めようが、周囲の者達が尻を叩いてくれるに違いない。
ラルフにとって最高の仕事場が見付かったと、クリスティ宛の手紙にしたためないといけない。また、常識を逸脱した珍獣ラルフも普通の男の子だったということも付け加える。果たして、クリスティからどのような返事が返されるか――想像しただけで、顔がにやけてくる。
エイルとマリサが和気藹々と話を続けていると、何を思ったのかラルフが大声を出し両者の間に割って入って来る。どうやらいい仲になると勘違いしたらしく、彼の行動は真剣そのもの。その焦った態度が愉快だったのかエイルはクスっと笑った後、ラルフが欲しい言葉を発した。


