これが、支配を受ける側の現実。
それが痛いほどわかったエイルの心が痛み出す。
しかし、言葉を出すことはしない。ただ頭を垂れ続け、クローディアの繁栄と栄華を願った。
◇◆◇◆◇◆
「うんうん、いいね」
この言葉の主は、ミシェル。
彼はこれから繰り広げられる戦いを今か今かと待ち望み、子供っぽくはしゃぎケラケラと笑う。
流石に態度が現状に合わなかったのだろう、ミシェルの後方で佇んでいた四十後半の男が耳元で囁き注意を促す。すると小言が気に入らなかったのだろう、ミシェルの顔が歪む。
「煩いな」
「で、ですが……」
「お前達は黙っていろ」
そのように言われると、相手は黙るしかない。男はミシェルの我儘の性格に頭を痛めているのだろう、自分の主人に気付かれないように肩を竦めると、ミシェルの後方へ戻って行った。
「主人の我儘に苦労しているな」
「見ればわかるよ」
「主人は、選べない」
口々に言い合うのは、親衛隊の新人三人。彼等は互いの顔を見合わせると、本音を発していく。
しかしすぐに、彼等の言葉が封じられる。三人の前に姿を見せたのは、隊長のシード。自分達の上司の姿に三人は背筋を伸ばすと、真剣な面持ちを浮かべているシードの顔に視線を向けた。
「あの……隊長」
「何だ」
「いえ、何でもありません」
「お前の言いたいことはわかっている」
シードを呼び止めたシンであったが、途中で言葉を止めてしまう。それでも部下の言いたいことがわかったのだろう、口許を緩めると心配しなくていいと発する。だが、シードが態と負けると知っているエイルは、何とも表現し難い表情を作りシードから視線を逸らしていた。


