ロスト・クロニクル~後編~


 年齢に統一感はないが、集まっている全員が力仕事をしているのでベーゼル同様に無精髭を生やし筋肉隆々。また、全身が鋼のように逞しく独特の雰囲気を漂わせている。そのような者達は含み笑いを漏らし指を鳴らしているのだから、気が弱いラルフは口から半分魂が飛び出す。

 このまま気を失っては仕事にならないとベーゼルはラルフの背中を強く叩き飛び出している魂を体内に納めると、大声で「マリサ」という名前を呼ぶ。ベーゼルの大声に応えるかたちで可愛らしい返事が返されると、十代後半の少女が此方に向かって小走りでやって来た。

「何かしら」

「こいつの面倒を見てやってくれ」

 ベーゼルが呼んだ少女は、美人というより可愛らしいといった方がいい。また賢そうな表情と雰囲気は、メルダースで学んでいる生徒に似ていた。だが、エイルとラルフを一番驚かせたのはこの「マリサ」という少女がベーゼルの娘で、父親と共に水晶の発掘場で働いているということ。

 彼女の主な仕事はベーゼルがラルフに与えようとしている雑用全般で、娘にラルフの世話を頼もうと呼んだという。不真面目の代名詞のラルフなのでこのように誰かが教えてくれるのは有難いが、可愛らしい女の子の正体が恐怖を抱いているベーゼルの娘という現実にラルフは打ちのめされた。

 彼の変化を敏感に感じ取ったのは、悪友同士のエイル。彼はラルフの肩に手を置くと「頑張れ」と、生暖かい声援を送る。悪友からの残酷な言葉にラルフは反論しそうになるが、置かれている現状が現状なので口を紡ぐ。そして、自分に訪れる不幸の数々に嘆き悲しんだ。

「駄目か?」

「大丈夫」

「そうか。今日から頼む」

「それは構わないけど……この状況で、大丈夫なのかしら。彼、元気がなさそうなのだけど……」

「心配ない」

 そう言った後、何を思ったのかベーゼルはラルフの身体を激しく振り出す。その荒々しい行動にマリサは両手で口を覆うと、父親にこのようなことをしたら死んでしまうと注意する。

 父親を含め水晶の発掘現場で働いている者の身体が逞しいというのはわかっているが、現場で新しく働こうとしているラルフの身体は逞しいというよりどちらかといえば軟弱に近い。

 その人物に対し乱暴な行動を取ることは相手が父親であっても許さないと言いたいのか、マリサは頬を膨らませるとベーゼルの腕を掴むと早くラルフを解放するように頼んだ。