ロスト・クロニクル~後編~


 その中で唯一ラルフの姿に反応を示したのは彼の情けない姿を目撃した村人で、彼等は口々に「何があったのか」と言葉を発し、ラルフに生暖かい視線を送り続ける。村人の視線にラルフは救いを求めるように大声を出すが、引っ張っている相手が相手なので救いはない。

 どうやらラルフとベーゼルの姿から何かを悟ったのか「何があったのか知らないが、頑張れ」という心温まる声援が、村人から送られる。自分が求めているモノとは違うモノが向けられることにラルフは泣き出しそうになってしまうが、ベーゼルの檄がラルフの涙を止めた。

 引き摺られるように連れて行かれるラルフに、エイルは彼に抱くことのない感情を抱きだす。これも悪友同士の繋がりがそうさせているのか、エイルは村長に断りを入れラルフの後を追うと、無事というより真面目に仕事が行なえるかどうか様子を見に行くことにした。


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「こいつが、今日から働く」

 ベーゼルの紹介に鉱山で働く者達は互いの顔を見合し、ざわめき出す。どうやら彼等もベーゼルと同じ第一印象を抱いたらしく、きつい仕事に付いていけず数日で逃げ出すのではないかと言われてしまう。また、中には「冗談はきついです」と、厳しいという意見もあった。

 勿論、ベーゼルも最初からラルフに水晶の発掘に携わらせるわけではない。発掘に耐えられる気力と根性と体力が付き、尚且つ仕事場のルールを覚えるまでラルフには雑用全般を担ってもらうという。

 その仕事の内容は、炊事や洗濯にはじまり働く者達の身の回りの世話に至るのだが、ラルフを一番恐れさせたのは、目上の者に対し愚痴を呟いた時のベーゼルの鉄拳制裁が飛んでくるというもの。

 これによりラルフの甘え切った性格の改善を行い、メルダースで学べなかった世の中の常識と仕事場の上下関係を教えていく。これも全てベーゼルの温かい心遣いの賜物で、彼の教育方針にエイルは感動を覚えたのか相手に拍手を送り、改めて推薦状を書いてくれた父親に感謝する。

「あのメルダース相手に、借金を背負っている奴だ。厳しく接し、借金の返済を助けてやれ」

 「借金」の単語に、一部の者が噴出してしまう。それも借金の相手がメルダースというのだから、洒落にならない。するとこれまた一部の者が指を鳴らしラルフに圧力を掛けると、ベーゼルにメルダース相手の借金なら全力で応援しないといけないと言い含み笑いを漏らす。