ロスト・クロニクル~後編~


 村長の話ではベーゼルは軟弱者を嫌っており、特にラルフのような性格の持ち主を見ていると苛立ちを覚えるという。それに鉱山で働きたいのなら、これくらい我慢しないと勤まらない。

 どうやらこれが一般的になっているらしく、村長は平然と構えベーゼルの行動を眺めている。しかし借金返済の前に身体を傷付けられたら堪らないと、エイルは程々にして欲しいと頼む。それに借金が換算されないと、クリスティに何を言われるかわかったものではない。

「エイル様」

「な、何でしょう」

「この者を引き取って宜しいでしょうか」

「いいのですか?」

「勿論です。この軟弱者を人様の迷惑にならない程度まで、鍛えようと思っています。このままでは、多くの者に迷惑を掛けてしまいます。それに、借金の返済があると聞きました。返済の相手があのメルダースということでしたら、早い方がいいでしょう。この性格ですので」

 物事の本質を的確に捉えているベーゼルの力強い言葉に、エイルは感動を覚えてしまう。僅か数分の間でラルフの悪い部分を簡単に見抜いてしまうとは――この人物に全てを任せれば、一生掛けても返済が無理と思われている莫大な借金が、綺麗に返済できるかもしれない。

「こいつには、今日から働いて貰います。まあ、この肉体ですから最初は雑用をやらせます」

「お願いします」

「勝手に――」

「何だ?」

「い、いえ……」

 ラルフの言葉を途中で遮ったのは、ベーゼルの迫力と言葉。新しい就職先の「上司」なので逆らえないというのもあるが、どうやらラルフはベーゼルの性格の方を恐れているらしい。

 完全に確立された上下関係に、エイルはほくそ笑む。メルダース在学時、教師達が懸命に彼の性格の改善を図っていたのだが、それが叶う前に卒業してしまったが、此方でベーゼルという素晴らしい人物に出会った。これにより、メルダースで叶わなかった性格改善が可能だ。

 ベーゼルはエイルと村長に自分は仕事に戻るということを伝え一礼すると、ラルフの襟首を引っ張る形で建物の外へ経連れて行く。響き渡るのは、ラルフの悲鳴に似た声音。声音だけを聞くと彼に対し同情心を抱くが、状況が状況なのでエイルと村長は特に反応を見せない。