「仕事がしたいそうだ」
「彼等ですか?」
「いえ、僕は違います。就職を願っているのは、僕の後ろに隠れている奴です。ラルフ、挨拶」
ベーゼルの前に姿を現し挨拶するように促すが相手の迫力に負けているラルフ、挨拶するどころか身体を震わせ小さくなっている。これでは挨拶は無理と判断したエイルは嘆息した後、自分の情報とラルフの情報を簡略的に説明し、就職していいかベーゼルに尋ねお願いする。
説明の中にあったエイルのファミリーネームに、村長同様にベーゼルも過敏に反応を示す。続いて村長から手渡されたフレイ直筆の紹介状に目を通すと、選別するかのようにラルフに視線を送る。
彼がラルフに抱いた印象も村長と同じで、筋肉が殆んどない弱弱しい身体で体力勝負の仕事場で働けるかどうか怪しい。ベーゼルは不満感たっぷりの溜息を付くと、村長の意見を聞く。
「お前に任せる」
そのように言われたところで、簡単に判断を下せるものではない。仕事を与えてもいいが、短期間で辞められたら此方側の損失が大きい。それに体力面もそうだが、精神面も軟弱だ。
水晶の発掘場で働いている者達の大半は、気が荒いといってもいい。その中に混じって仕事を行なうということは、それなりに強い精神面を持っていないといけないというのに、ラルフは情けない。
ベーゼルの反応がいまいち悪いことに気付いたエイルは、反射的に「何でもやらしていい」と、ラルフの意思を無視した言葉を発する。また、一生掛かっても返済が難しい金額の借金を背負っているので、給料がいいこの場所で働かせて欲しいとエイルはベーゼルに懇願する。
「貴様は、恥ずかしくないのか?」
「ふえ!?」
「貴族という身分に関係なく、お前の為に恥を承知で頭を上げているんだ。それだというのにお前は……」
「友人ですし……」
「何?」
突然声を荒げだしたベーゼルはラルフの前に歩み出ると、エイルの後ろに隠れているラルフの襟首を掴み引き出す。そして互いの顔が密着するギリギリの位置まで引き寄せると、軟弱と表現した者に自分の意見を言っていく。
急遽はじまった説教の時間にエイルは目を丸くし止めに入ろうとしたが、このまま言わせておいた方がいいと村長に止められてしまう。


