しかしメルダースの卒業者という身分は魅力的で、尚且つバゼラード伯からの紹介状があるので怪しい人物ではないので安心して雇える。それらの点を考慮すれば鉱山で働いて貰うだけの価値があるのだが、いかんせん体格が細い。これでは体力勝負の鉱山では、足手纏いになってしまう。
なかなか結論を出してくれない村長にエイルはやきもきしたのか、ラルフを雇ってくれるのかどうか尋ねる。彼の言葉に村長はフッと短い溜息を付いた後、腰掛けていた椅子から立ち上がると窓を開け、家を取り囲んでいる村人に「ベーゼル」を連れてくるように言う。
更に自分のもとに訪ねて来た人物は不審者ではないということを説明し、それぞれの仕事に戻って欲しいと頼む。村長の言葉に集まっていた村人は小声で話し合うと、何事もなかったかのように解散する。
ベーゼルというのは人の名前で、水晶を採掘する鉱山で働いている者で「親方」と呼ばれる統括者だ。そして自分では判断しかねないので、彼に就職していいかどうか判断して貰うという。
「だって」
「怖い人なのかな?」
「僕は知らない」
「怖い人だったら嫌だな」
「鍛えてくれるよ」
「それは嫌だ」
「我儘を言うな」
ラルフの不真面目な性格を改善するには、厳しく接してくれる人物の方がいい。また、鉄拳制裁があった方が甘え切った部分が修正される。それにあれこれ言ってくれる方が借金返済も捗り学園長のクリスティも安心するだろうが、それ以前に就職しないと話しにならない。
十数分後――
ベーゼルと呼ばれる人物がやって来る。
年齢は四十後半の人物か、鉱山で働いているということもあり体格はいい。贅肉は削ぎ落とされた筋肉質の体型で、肌は浅黒い。それに無精髭が独特の雰囲気を醸し出し、今まで仕事を行なっていたのか汗ばんでいる。また二の腕に目立つ傷は、水晶を発掘している時に負ったものだろう。
「何でしょう」
突然村長に呼ばれたことに不信感を覚えているのか、自分の目の前に立つエイルとラルフに厳しい視線を向けている。ベーゼルが放つ迫力に完全に負けてしまったのか、ラルフは反射的にエイルの背中に隠れると顔だけを覗かせるという、情けない一面を曝け出してしまう。


