ロスト・クロニクル~後編~


 このような小さい村でもフレイの名前は知られており、尚且つ「バゼラード」の名前は強い影響力を持つ。これのお陰で話をスムーズに行なえ、村人からの攻撃を受けずに済んだ。

「そうでしたか、貴方が……」

「わかって頂き、幸いです」

「本当に、申し訳ありません。現在、我々の置かれている状況を考えますと、どうしても……」

「それは存じております。父もその点に付いて、頭を痛めておりましたので。で、彼ですが……」

 何の前触れも無く話を振られたことにラルフはキョトンっとした表情を作り、左右に視線を走らせる。その後、エイルの顔に視線を合わせ「何?」と言葉を返し、エイルと村長に脱力感を与えた。

「自己紹介だよ」

「ああ! 俺は、ラルフ・ジブレットです。エイルに頼んで、クローディアに就職先を探しに来ました」

 初対面の相手に対し敬語を用いるのが普通の感覚だが、一般常識を持ち合わせていないラルフが敬語を用いるわけがない。いや、メルダースで厳しい教育を受けてきたのだから敬語が使えないわけではないのだが、どうやら相手がメルダースの教員ではないと油断したらしい。

 馴れ馴れしい態度の無礼な人物に、好々爺という雰囲気を漂わせている村長の顔色が悪い。これでは就職に響いてしまうと瞬時に判断したエイルは、ラルフがメルダース卒業者と話す。

「本当ですか!?」

「僕と同じ時に、卒業しました。それにメルダースを卒業しましたので、態度は悪いですが頭はいいです。何せ、進級や卒業が難しいとされている学園で、留年は一回で卒業試験は一回で合格しています」

「そのようには見えないが……」

「卒業証明書もあります」

 何が何でもラルフに鉱山で働いて貰わないといけないので、エイルはラルフのいい面と悪い面の両方を村長に話していく。話の中に明らかに貶されていると思われる内容が含まれることに気付いたラルフが間髪いれずに反論するが、エイルの殺意たっぷりの視線で撃沈する。

 事細かな説明でメルダースの卒業者ということを理解してくれたが、世界最高峰と呼ばれているメルダースの卒業者は真面目な者が多いというのが世間一般の認識なのだが、ラルフはその認識からかけ離れ不真面目という言葉が似合う。それに、一番の問題は真剣さが乏しい。