所謂、暇潰し。
ミシェルの身勝手さにエイルはシードに、これを受け入れるかどうか尋ねる。勿論、新人隊員のエイルが隊長に相手に文句を言っていい身分ではないが、ミシェルの身勝手さが許せなかった。
それに対しシードは一言「愚問」と、返す。彼曰く、答えは最初から決まっているという。
「相手が、公子……ですから」
「そうだ」
シードの短い言葉に、エイルの表情が強張っていく。確かに相手のミシェルは公子という高い身分にいるが、だからといって好き勝手に振舞っていいものではない。これをクリスティが知ったら――
ふと、学園長の顔が脳裏を過ぎる。
しかし今、クリスティの協力を得るわけにはいかない。何より、フレイが許さないだろう。
時が訪れたら。
これが、フレイの言葉。
「頼るは……いけないことです」
「何のことだ」
「一瞬、学園長を思いました」
エイルの言葉にシードは、何とも表現し難い表情を作る。シードはエイルが言いたいことはわからなくもないが、それは望んではいけないと忠告する。フレイ同様に、時ではないと――
失礼な発言の数々をしてしまったことを詫びるように、エイルは深々と頭を垂らす。だがシードは頭を振り、この質問に対しての罰はないという。寧ろ、この質問を行なうのが普通と言った。
「ただ……」
其処で一度、言葉を止める。
そして、その言葉に続けたのはルークとの手合わせに立ち会うようにという命令であった。
「いい経験になる」
「わかりました」
「他の二名も一緒だ」
彼が言う二名の隊員は、アルフレッドとシンを指す。新人にとって今回の手合わせはいい経験になるとシードは言っているが、この裏に何か隠されているのではないかと妙に勘繰ってしまう。だが、シードと暫く話を続けていると、エイルの考えが取り越し苦労だと知る。


