「いえ、此方こそ連絡有難うございます。国境を越える前にラルフを捕獲できて、世界の平和に……」
その意味不明の発言に、アゼルを含め兵士達が一斉にエイルの顔を凝視してしまう。彼等の反応についつい口を滑らせてしまったと反省するエイルは、咳払いした後「何でもありません」と、途中で中断してしまった言葉に付け加えると、ラルフの襟首を掴み引き摺っていく。
引き摺る者と引き摺られる者から見え隠れする、圧倒的に力の差。彼等の姿を平然とした表情で眺めていたアゼルと対照的に、彼の部下は彼等の間に存在する力関係に気付いたのか、全員が唖然として見送っていた。
建物の外へ出ると同時にエイルは周囲に誰もいないことを確認すると、ラルフを睨み付け「どうしてクローディアを訪れた」と「研究所で働いていたのではないのか」の二点を問う。
「ははははは……クビになった」
自覚症状がないのかそれとも大したことはないと考えているのか、ラルフはのほほんっとした態度で自分がクローディアを訪れた理由を話していく。だが、エイルの態度はラルフと異なり「クビ」という単語に頭に血が上ったのか、身体を小刻みに震わせ爆発寸前だった。
「どうしてだ」
「実験に失敗して……」
「実験は常に成功するものじゃないんだから、失敗するのは当たり前だろう。だから、それだけでクビになるわけがない。他の理由があるんじゃないのか? 隠すのは身の為じゃない」
「く、黒エイル……な、懐かしいな」
久し振りに感じる懐かしい感覚であったが、現在自身が置かれている状況を考えると思い出に浸る余裕はない。それどころか正直にクビになった理由を話さないと命を落としかねない。
ラルフはエイルの機嫌を確認しつつ、就職からクビに至った理由を話していく。といっても彼の説明は回りくどく、無駄に長い。エイルが説明すれば一行で済む内容で、要は「研究所を破壊してしまった」というのが、ラルフが研究所をクビになった主な理由というか原因だ。
メルダース在学中も研究や実験に失敗して、何度もメルダースを破壊してきた。結果、修繕費は積もりに積もり天文学的な数字になってしまい、在学中に借金を背負う破目となってしまった。
卒業後、真面目に研究所で働き借金返済を行なわなければいけなかったのだが、その研究所も見事に破壊しクビとなってしまった。勿論、修繕費は全てラルフが持つ。
「馬鹿だ」


