ラルフの言葉をタイミング良く遮ったのはアゼル。この後、正式な手続きを終えて解放されるのだが、エイルに身元を証明して貰ったのでこのまま解放されると思っていたラルフだが、世の中はそれほど甘くはない。
アゼルは部下と共にラルフを牢から出し引き連れていくと、手続きの書類を無理矢理書かしていく。その間エイルは、用意されたお茶を読みつつラルフの手続きが終えるのを待つ。
そして、15分後――
釈放の手続きを終えたラルフが、アゼルと共に戻って来る。これで本当の意味で解放されクローディアに入国が可能になったが、流石に食虫植物のマルガリータの入国は許せない。
エイルはラルフが抱き締めているマルガリータが植わった鉢植えを指差すと、マルガリータの入国だけはできないと話す。ラルフにとってマルガリータは切っても切れない関係だが、繁殖力旺盛の食虫植物がクローディアで繁殖したら全ての生態系の頂点に立ってしまう。
どどめ色の花が咲き乱れる北の国――というのは、洒落では済まされない。それにこのどどめ色の植物を両親や兄、また多くの使用人が何と言うか……というより、阿鼻叫喚だろう。
しかしマルガリータと別れたくないラルフは、一緒に連れて行きたいと駄々を捏ねるがエイルが受け入れてくれるわけがない。それ以前に、母国を危険に晒すことは絶対にできない。
メルダース在学中のエイルであったら、間髪入れずに魔法を使用しラルフを黙らせていたが、親衛隊の隊員となった今、暴力で訴えるということは滅多に行なわない。また、側にアゼルを含め彼の部下がいるので、魔法を使用し友人に暴力を振ればいい印象を与えない。
「仕方ない、話は後で……」
マルガリータと離れたくないラルフとのやり取りは長く掛かると判断したエイルは、マルガリータの処分を後回しにする。それにアゼル達も仕事があるので、長く止まっているわけにもいけない。
話が通じないラルフに溜息を付いた後、エイルはアゼルにラルフを引き連れていくと言う。彼の言葉にアゼルは、エイルが年下であっても身分が違うということで恭しい態度を取る。
アゼルが見せる態度の違いにラルフは不満を抱くが、エイルは貴族の息子なので仕方ないと諦めるが、同時に貴族の一員だと身分が下の者がこのような態度を取ってくれるのだと知る。
「では、これで――」
「態々、有難うございます」


