彼等の話にフレイは無言で頷くと執事を呼び、城にいるエイルに今の件を話し帰宅するように伝えて欲しいと言う。フレイが話を信じてくれたことに兵士達は胸を撫で下ろすが、まだ安心はできない。それに伯爵の豪華な邸宅――漂う華やかな雰囲気が、彼等を圧倒していた。
エイルを呼びに来た兵士達は爵位を持つ家系出身ではなく、ごく普通の家系出身。貴族の生活は物語や人々が語る話を聞く程度だったので、この雰囲気は落ち着かず身体がムズ痒い。
それでも呼びに来た人物――エイルが帰宅するのをメイドが用意したお茶を飲みながら待つ。そしてエイルが帰宅後、彼を連れ国境で捕まっているラルフのもとへ案内するのだった。
◇◆◇◆◇◆
「……ラルフ」
「わーい! 本当に来てくれた」
牢の中に閉じ込められているラルフの姿を見た瞬間、エイルは顔を引き攣らせ信じ難い現実に運命を呪った。
「ラルフと呼ばれる人物が捕まっている」と執事から聞かされた時、ハッキリ言って執事が嘘を付いていると思った。しかしメルダースにラルフという悪友がいることを両親や兄に話していないので、執事が「ラルフ」という名前を知っているのはおかしいので彼が嘘を付いていないのは確か。
そして浮浪者に近いラルフの姿を自身の目で確認した今、周囲に誰もいなかったら呪文を詠唱していた。しかしこの場で影響し魔法を発動した場合、バゼラードの名前に泥を塗る。
沸々と湧き出してくる負の感情を何とか抑え付けると、エイルは隊長アゼルに「ラルフは間違いなくメルダースの卒業者で、尚且つ友人関係にある人物」だと、丁寧に説明していく。
エイルは伯爵の爵位を持つバゼラード家の次男で、彼自身王室親衛隊に勤めている身。その人物が彼の身元を証明したのなら間違いないと判断したアゼルは、部下達にラルフを牢から出すように言う。そして牢から出されたラルフは緊張感が一気に緩んだのか、情けない表情でエイルに感謝していた。
「助かったよ」
「全く……何をしているんだ」
「メルダースの卒業者と説明したんだが、信用してくれなかったんだ。で、牢の中に入れられた」
「その姿じゃ仕方ないよ」


