創作の物語が現実になるかどうかは不明だが、導入部分が似ていると結末まで一緒ではないのかと考えてしまう。真剣に未来の姿に想像を巡らすエイルと、夢の世界に浸っているマナ。両者の考えは異なっていても互いを想い合う心は共通しているのだろう、その顔は幸せそのもの。
「ねえ、マナ」
急に自分の名前を呼ばれたことに、マナの声音が裏返ってしまう。その可愛らしい返事の返し方にエイルは顔を緩めると、久し振りに一緒にじゃがいもを食べようかと提案してきた。
彼の提案に、マナは断るわけがない。彼女は嬉しそうに何度も頷き返すと「じゃがいもの用意をしに行ってきます」と言い残し、いそいそとエイルの私室からマナは出て行くのだった。それはささやかな幸福であったが、彼等にとっては大きな幸福。それを味合う二人は、幸せを満喫する。
◇◆◇◆◇◆
エイルとマナが仲良くじゃがいもを食している頃、クローディアの国境付近で事件が発生した。
その事件の主は国境を越えるのに必要な許可書は所持していたが、いかんせん許可書は長年の風雨に晒されたかのようにボロボロの判別不能で、国境を守護している兵士達を困らす。
また、浮浪者·乞食――そのような言葉が似合うその者は、意味不明の言動と態度を繰り返し、これまた兵士達の頭痛を誘発する。そして、何より彼等を驚愕させたのはその者が持ち込もうとした植物。
この植物の名前は、何故か復活を果たした〈マルガリータ〉だった。勿論、マルガリータの育て主はエイルの悪友のラルフで、彼は何を思ったのかクローディアの国境まで流れ着いていた。
「で、何の為に来た」
「だから、クローディアに親友がいるんだ。その親友に会いに来たって、何度言えばいいんだ」
なかなか兵士達が自分の話しを信じてくれないことに、ラルフはブスっとした表情を作る。だが、彼は気付いていない、そのふてぶてしい態度が自分の評価を下げていっていることを――
それに通行の許可が下りない一番の理由は、ボロボロになってしまっている通行許可書。判別不能状態ではこれが本物か偽物か確認できず、兵士達はラルフを足止めしていた。いや、それ以前に国境を越えられない理由を持っていた。それは、勝手に進化を遂げたマルガリータの存在だ。


