彼女が「何故?」と尋ねる理由は、わからなくもない。エイルもマナの立場であったとしたら、同じように尋ねていた。エイルがマナにそのように言った理由は、一言で「付き合い易い」というもの。
以前エイルがメルダースの生徒はプライドが高いので、苦手と言っていた。しかしマナの場合、メルダースの生徒と違い素直で純粋で、一番の利点は一生懸命のところが可愛らしい。
エイルが外見の特徴で異性を選ぶことはせず、重点を置くのは内面の部分。マナはエイルが重点を置く部分を全て満たしており、彼にしてみればこれ以上の相手はいなかった。だから自分の気持ちを素直に伝えていくのだが、このようなことが苦手なエイルは完全にいっぱいいっぱいだ。
それでも言いたいことと気持ちが伝わったのか、顔を真っ赤にしているマナは嬉しそうだった。
といって、恋愛に不慣れのエイルが「付き合う」という行動が取れるわけがなく、最初は「友達」という関係からスタートする。それでもマナは嬉しいのだろう、囁くような声音で「宜しくお願いします」と、返す。
「他の人には、内緒にしておいて欲しいな。別に悪い意味じゃないんだけど、立場が……ね」
「はい」
「僕は立場とかそういうのは嫌いなんだけど、自分がどうこうできるものじゃないから……御免」
「はい」
エイルはそのように言ってくれるが、全てが彼と同じ考え方を持っているわけではない。明確的な立場を利用し好き勝手に振舞う人間もいるのを知っているマナは、彼の言葉に頷くしかできない。
あともうひとつ、置かれている立場とは別の理由が存在する。それは、一言で説明すれば「恥ずかしい」というもの。今はぎこちない関係を築いているが時間が経過すれば慣れてくるので、それまで我慢して欲しいという。また、周囲の目があるのでベタベタはできない。
そのような制約の中での関係だが、マナは十分であった。それにエイルと「友達以上恋人未満」の関係になれるとは思わなかったので、物語の中に登場する幸せなヒロインのようだ。
幸せに浸っているマナを眺めていた時、エイルは何か違和感を覚える。これは、デジャブウというものか――いや、これはデジャブウというものではなく、本当に体験していた。
それはメルダースで行われた、素人の演劇の演目だ。あれは主人公が王子様でヒロインは城で働く侍女であり身分違いというところはそっくりであり、最終的には二人は結婚していた。


