しかしすぐに彼女の顔から、表情が消え去った。この後、彼女はエイルの部屋に行き、ジャネットが呼び止めた理由を話さないといけない。ジャネットに「エイルは優しい人」と言っていたが、恐怖心がないといったら嘘になってしまう。それに立ち去る時の雰囲気を思い出すと、身体が震えた。
だからといって、約束があるのでエイルの部屋に行かないわけにもいかない。マナは自身に気合を入れると、心臓を激しく鼓動させながらエイルの部屋がある方向へ歩みを進めた。
マナは扉を叩きエイルからの返事を待つが、扉を叩く音が聞こえなかったのかエイルからの返事がない。仕方ないのでもう一度扉を叩くと、今度はエイルからの返事が返ってきた。
エイルからの言葉に「失礼します」という言葉を発すると、マナは部屋の中に入室していく。
次の瞬間、彼女の時間が止まった。
明らかに、エイルが発しているオーラに黒いものが混じっている。先程のジャネットの件が尾を引いているのか、彼が発している雰囲気にマナは言葉を失いオロオロとしてしまう。
だが、現在の雰囲気を払拭するには言葉を発しなければいけない。マナは意を決し言葉を発すると、何故ジャネットが自分を呼び止めたのか丁寧に話し、彼女を許して欲しいと頼む。
するとジャネット呼び止めた理由を聞いた瞬間、エイルが発しているオーラが変化していった。
「ああ、そうなんだ」
「ですので……」
「わかっている。まあ、僕も大人気なかった。で、誕生日の話で聞きたいんだけど……マナの誕生日は?」
「私の誕生日は、まだ先になります」
「詳しく知りたい」
「10の月の23日です」
「覚えておくよ」
マナの誕生日を知ったことが嬉しかったのか、エイルの表情が柔和になっていく。彼曰く、誕生日が来たら何かプレゼントを贈りたいというが、エイルから何度もプレゼントを受け取るわけにはいかないと丁寧に断る。だが、マナが断ったことが気に入らなかったのか、彼はブスっとした表情を作ると、小声で「素直に受け取ればいいのに」と、愚痴っていた。


