「ど、どうしよう」
「多分……大丈夫」
オドオドとした態度でそのように言葉を返すが、マナは動揺を隠し切れない。この場合マナは被害を受けないだろうが、邪魔に入ったジャネットは被害を受ける確立が高いだろう。
エイルはメイドに八つ当たりや手を上げるということは行わないが、毒が混じった言葉を発するのは間違いない。特に彼が立ち去る時に発していた雰囲気が、恐ろしいものだった。
「私、クビよね」
「どうして?」
「邪魔をしてしまったわ」
「大丈夫よ。エイル様は、とてもお優しい方だもの。でも、どういう理由で私を捜していたの?」
「お誕生日よ」
ジャネットが言う「誕生日」という言葉に、マナはキョトンっとした表情を作ってしまう。主人夫婦やイルーズの誕生日は、数ヶ月先。それならエイルの誕生日が近いのかと尋ねるも、それも違うという。
なら、残っているのは屋敷で働いている使用人。その中の誰かが誕生日を迎えるのかと考えていくと、メイド仲間の中に誕生日が近い人がいるということを思い出す。同じ職場で働いている仲間の誕生日を忘れていたことに、マナはハッとなり忘れていたことを内緒にして欲しいと頼む。
「それは大丈夫。だから、エイル様に……」
「うん。何とか言ってみるわ」
「有難う」
と、ジャネットに約束するがエイルがマナの言葉を受け入れてくれるか怪しい。エイルは勉強熱心で真面目な性格の持ち主だが、その反面強情な一面を持つのでそれが厄介であった。しかし約束してしまったので、何とか機嫌を治してもらわないといけないが、いい方法が思い付かない。
マナはフッと溜息を付いた後、どのような雰囲気で仲間の誕生日を祝うのかと尋ねるが、それはまだ決まっていないという。ジャネット曰く「マナを含めメイド仲間と共に考える」ということであったが、先程の件があるので長くマナを引き止めるわけにはいかなくなった。
予定を含めもろもろのことが決まったらマナに伝えるという形で、ジャネットとの会話は終了する。ジャネットはマナと別れる時、両手を併せ拝み倒す。何が何でもエイルの機嫌を回復させて欲しいと願っているのだろう、その必死な一面にマナは苦笑するしかできなかった。


