マナが語る内容にエイルは自分が勝手に勘違いし、勝手に苛立っていたということを知る。それに彼女も約束を破ったというわけではなく、それどころか約束を守ろうと頑張っていた。
真相を知らず一方的に苛立っていたというのは、実に情けない。しかし「マナ」が絡むと、どうも感情がざわめく。
勿論、理由は理解している。
だが、気恥ずかしくて言葉に出せない。
悶々とした感情を抱いているエイルを余所に、マナはレシピを貰ったので頑張ると約束する。
「……期待しているよ」
「はい」
エイルに美味しい菓子を作るのが相当嬉しいのか、マナは頬を綻ばせ微かに頬を赤らめていた。その表情は、一言で言えば可愛らしい。また、ちょっと子供っぽい部分もあるがそれが彼女の特徴だ。
マナの笑顔を見たエイルは照れを隠す形で頬を人差し指で掻くと、思い切って言葉を発する。
「その……マナ?」
「何でしょうか?」
「今、暇?」
「大丈夫です」
「じゃあ、こっちに――」
エイルはマナの手首を握り締めると、人気の無い場所へ連れて行く。先程いた場所で話してもいいが、誰が横を通るかわからないので、マナを人気の無い場所へ連れて行ったのだった。
だが、このような時に事件が発生するもの。エイルがマナを連れて行く途中、マナのメイド仲間のジャネットとすれ違ってしまう。更に不幸が続くもので、何とジャネットがマナを捜していたという。
「……エイル様?」
「いいよ」
「で、ですが……」
「用事が終わったら、部屋に来てくれればいいから」
「わかりました」
マナの返事に頷き返すと、エイルは踵を返し立ち去っていく。その後姿から感じられるのは、刺々しい雰囲気。また「ジャネットに邪魔された」というのを相当根に持っているのか、明らかに機嫌が悪い。そんなエイルの態度にジャネットの顔から血の気が引いたのは、言うまでもない。


