流石に、父親相手に土下座することはできない。した瞬間、先程以上の冷たい言葉が待っている。
勿論、エイルも「阿呆」と言われることをしたので、これに関しては反論することはしない。
しかし、悪夢はこれで終わったわけではない。次にフレイが発した言葉にエイルの顔は青ざめ、身体を震わせた。
父親との手合わせ。
実力が乏しいというのなら、実力を付けるまでの話。フレイの意見は正しいものであったが、エイルにしてみれば手合わせにいい思い出がない。といって、悲観的に捉えるものではない。
父親が言うように、実力が乏しいのなら付けないといけない。またエイルは親衛隊の一員なので、強い方がいい。
彼はメルダースで学んでいるので魔法の面では優秀だが、剣に関しては未熟そのもの。最悪、武者修行を行なっていたアルフレッドより劣る可能性が高く、エイルと同じ新人のシンにも負けてしまうだろう。
親衛隊の中で一番弱い――というのは、エイルのプライドに関わる。いや、それ以前に一族の名前に傷が付く。
「お、お願いします」
「今日は、素直だな」
「色々と事情が……」
「負けたくないのか?」
流石というべきか。フレイの鋭い指摘にエイルは項垂れると同時に、仲間に負けたくないという本音を吐露した。負けたくないという感情を持つことは、別に悪いことではない。寧ろ、そのような感情を持つ方が自身の実力を高め、上を目指すことができるとフレイは言う。
また、向上心がない者は親衛隊に必要はないと厳しい意見を言い、エイルを徹底的に鍛え上げると約束する。
鋭い眼光のフレイを見た瞬間、エイルは多少の手加減を願ってしまうが、フレイにそれを求めるのは間違っている。
「その……いつ……」
「今がいいのか?」
「い、いえ……」
現在、外は深い闇に包まれている。その中で手合わせというのは危険が付き纏い、尚且つ周囲を驚かせてしまう。百戦錬磨のフレイであったら外が闇に包まれていようが関係ないが、未熟なエイルにしてみればできれば明るい中で手合わせをしたいと懇願するのだった。


