最強の守護者と呼ばれているが、所詮はクローディアの中での話し。他国に目を向ければ、シードと同等の力の持ち主やそれ以上の実力を兼ね備えている者も多い。現にシードは、フレイに勝てない。
手合わせで知った、自分の実力。今以上に実力を高めなければ、本当の意味での守護者になることはできない。
エイルに自身の実力を知るように忠告したが、シードも己の実力を再認識しないといけない。ミシェルの思い付きによって開催された手合わせだったが、結果としてシードにいい影響を与えた。
だからといって、ミシェルに感謝することはしない。彼のやり方と振る舞いは、褒められたものではないからだ。
もっと、実力を――
シードが明確に「力」を求めたのはこれがはじめてだったが、力はないよりあった方がいい。それに彼は親衛隊隊長の地位に就き、フレイの意思を継いでいる者なので、弱いことは許されない。
全ては、クローディアの未来の為に。
改めて自分の役割を再認識したシードは、自身の命を掛けてクローディアの王家に尽くそうと誓うのだった。
◇◆◇◆◇◆
その夜、エイルはフレイに手合わせの件を話していた。エイルの話しに当初フレイは表情を崩さず聞いていたが、ミシェルの件に話が行くとピクっと眉を動かし険しい表情を浮かべた。
「……わかった」
一通りの話を聞き終えたフレイは、溜息と共にそのように発する。シードとルークの手合わせはある程度は予想していたらしいが、ミシェルの件に関しては全くの予想外だったらしい。
フレイはシード同様に、部下を無碍に扱うことを嫌う。それも、一方的な我儘での暴力は許されるものではない。
「クリスティ殿の評価を落とすな」
「そうですね」
「馬鹿の青二才……か」
以前、クリスティがミシェルのことを「馬鹿の青二才」と表現していると、エイルから聞いたことを思い出す。あの時、笑って「馬鹿の青二才」という言葉を聞いていたが、ここまでくると笑い事で済まされない。また、クリスティの耳に入ったらどうなるか――最悪、彼女の魔法が飛ぶ。


