しかし、本当に結婚が可能か。
ふと、そのような疑問が湧き出る。ミシェルとシェラの結婚は、クローディア側が拒絶反応を示していることをルークは知っている。その中で、どのように両者が結婚するというのか。
ミシェルの性格を考えると「無理矢理」という行動を取るだろうが、下手にクローディア側を刺激していいものではない。それを知ってか知らずか、ミシェルは「結婚」を繰り返す。
いい加減にして欲しい。
それがルークを含め周囲の本音だが、口に出した時ミシェルに何を言われるかわかったものではないので、沈黙を続ける。
やはり家臣達の気持ちを理解していないミシェルは、同じ言葉を繰り返す。「シェラに会う」それしか頭にない。
だが、毎回の事柄なので特に疑問を抱くことはしないが、ルークが疑問を抱いたのは「何故、忠誠心を聞いたのか」という点。何か裏が存在して聞いたのかと疑問視したが、彼の態度を見ると意味がないように思えてくる。
ルークは恐る恐る、忠誠心を聞いた理由を問う。するとミシェルは明後日の方向に視線を向けると、人差し指を己の顎に当て何やら考え込む。そして答えが纏まったのか、口を開いた。
「だって、命令に従わないし」
顎に当てていた人差し指でルークを指し示すと、手合わせの件に付いて文句を言っていく。
ミシェルは「ぶっ殺せ」と命令を下したが、ルークはその命令を受け入れず、それ以前にシードに敗北した。ミシェルはルークが忠誠を誓っていないからシードを殺さず、尚且つ敗北したと勘違いした。
だからミシェルはルークに忠誠を誓っているかどうか尋ねたというが、そもそもシードを殺していい理由がない。
公子の立場で我儘を言っても今のところ大事に発展していないが、これが一国を背負った場合どうなるのか。今のように我儘を言い続けるわけにもいかず、何より国民を第一に考えないといけない。
その考えを持っているのか。
ルークは、再びミシェルに問う。
「そんなこと、何で聞くんだ」
国民を第一に考えなければいけないことを「そんなこと」で片付けてしまう。ルークはミシェルが少しでも国民の幸せな未来について考えていると願っていたが、無残にもその願いが崩れ去る。ミシェル曰く、今は父親が国を動かしているので自分は関係ないということらしい。


