「お、お前……」
「隊長と副隊長には、内緒で」
「勿論……というか、そうしないと」
親衛隊の者が、王子の名前を知らない――などシードとリデルが知ったら、何と言うだろうか。激怒されることは間違いなく、シードは抜刀しリデルは魔法の的になるのは間違いない。エイルの話にアルフレッドは納得できるらしく、顔面蒼白になりながら手を合わせる。
「ルシオン様だ」
「ああ、そうだった」
「……忘れていたのか」
「い、いや……」
「わからないことがあったら、事前に聞けばいい。隊長と副隊長に、怒られたくないだろう?」
「まあ……な」
「そういうことだから、宜しく」
念を押すかのようにエイルはアルフレッドの肩を叩くと、寂しそうに待っているシェラのもとに戻る。エイルが戻って来たことにシェラは表情を綻ばすと、何を話していたのか尋ねる。
「ちょっと……な」
「言えないこと?」
「男同士の話だよ」
「男同士?」
「だから、話せないんだ」
本当は、どういう話をしていたのか聞きたかったが「男同士」と言われたので、シェラは珍しく引き下がる。だが、それ以上に二人の関係を知りたかったらしく、それについて尋ねる。しかし体格のいいアルフレッドに独特の何かを感じ取ったのか、近付こうとはしない。
「お、俺は……」
アルフレッドが自己紹介をしようとした瞬間、シェラは反射的にエイルの背中に隠れてしまう。シェラに拒絶されたことにショックを隠し切れないアルフレッドだが、親衛隊として動揺してはいけないと、胸を張って自己紹介をはじめるが、シェラは殆ど聞いていない。
シェラに無視されていることに、アルフレッドは肩を落とす。まさかここまで拒絶されるとは思ってもみなかったのだろう、落胆を隠せない。シェラの冷たい反応にエイルはアルフレッドに同情を覚えるが、今シェラを引き離してアルフレッドに味方するのは得策ではないと判断する。


