「何をなさっているのですか」
「シェラに会いに」
「でしたら、何故言い争いに……」
「彼女が、邪魔をする」
彼女――というのは、勿論リデルのことを示す。ミシェルの言い方にシードはリデルを一瞥すると、彼女の意志を確かめる。シードと視線が合った瞬間、リデルは頭を振る。それにより、ミシェルのいつもの我儘が影響していると瞬時に判断することができ、シードを困らす。
「どうして未来の夫の僕に、回復したことを隠していた。これは、喜ばしいことじゃないか」
シェラと結婚するのは自分しかいないと言いたいのだろう、自信たっぷりに言い放つ。しかし周囲はシェラと結婚することなど認めておらず、当のシェラもいい表情をしていない。
記憶がなくとも本能的にミシェルが「大事な人達を奪った人物」と理解しているのだろう、シェラが反射的にリデルの影に隠れる。シェラに拒絶されたことが余程ショックだったのだろう、ミシェルは動揺を隠せない。彼の考えでは互いに相思相愛で、拒絶される理由はなかった。
だが、このように拒絶された。
ミシェルの眼元に、涙が滲む。
「な、何故だ」
それについて、シェラは何も答えることはしない。ただリデルの後ろに隠れ、顔だけを覗かしている。
「ほ、他に好きな人がいるのか」
「お兄ちゃんが好き」
「お、お兄ちゃん!?」
「お兄ちゃんは、かっこいいもん。優しくて、一緒に遊んでくれる。とってもとっても、いいお兄ちゃん」
兄について熱く語るシェラに、ミシェルはタジタジになってしまう。いや、ミシェルだけではなく、シードもリデルもタジタジになってしまう。シェラはブラコンだとは聞いていたが、まさかこれほどのものだったとは――シードは、何か思うことがあるのだろう、いい表情をしない。
「大好きだもん」
これがある意味止めとなったのだろう、ミシェルが肩を落とす。シェラの兄ルシオンがいないとはいえ、彼女の心の中に生き続けている。これを取り除かなければ立ち入ることができないが、重症とも呼べるほどのブラコンシェラを振り向かせるのは、簡単な物ではない。


