ロスト・クロニクル~後編~


 全ては、国の将来の為に――

 その決意を胸に秘める。


◇◆◇◆◇◆


 頃合いを見計らい、シェラのもとにエイルがしたためた手紙が届けられる。兄からの手紙は待ちに待ったもので、届けられた手紙に一喜一憂する。エイルがメルダースでの生活を面白おかしく、また授業内容を丁寧に書いているので、シェラの強張った口許が緩んでいく。

 手紙を届けたシードは、シェラの反応に過敏に反応を示す。このように笑ったのは、いつの頃なのか――

 彼女が感情を失ったのはクローディアが悲劇に包まれた時なので、数年といったところだろう。

 しかし今、シェラが笑っている。

 ただ、シードもこの笑いを素直に喜ぶことができないでいた。この手紙は偽りでしたためられた物で、シェラが本当に望んでいる手紙ではない。それでもシェラが喜んでいることは、回復の兆し。

「シード」

「何でしょうか」

「お兄ちゃん、演劇をやったのね」

「それは、初耳です」

「お兄ちゃん、主役の王子様をやったみたい。王子様って、お兄ちゃんは王子様だけど……」

「メルダースでは、正体を明かしていないのでしょう。王子とわかりますと、何かと面倒なことがあります」

「そうなの?」

「世の中、いい人だけではありません。中には、ルシオン様の力を利用しようと考える者もいます」

 シードの話に納得できたのか、シェラが頷く。大好きな兄が利用されることは、シェラにとって許せない。ブラコン気質が高いシェラ。メルダースで平和に学業に励んでいることを望む。ただ、それ以上に兄が演じた劇を見たかったと本音を漏らし、シードを困らせる。

 シェラは兄に会いたいと言い出すが、流石に会えるものではない。シードは真実を隠しつつ、クローディアとメルダースの距離は遠いので、無理と伝える。また学業に専念しているので、邪魔をしてはいけない。これも王位継承者の役割――と、事細かに説明していく。