ロスト・クロニクル~後編~


 それを敏感に感じ取ったエイルとイルーズは、無意識に背筋を伸ばす。フレイはそれぞれの息子達を見据えると、独自の情報網で掴んだ内容を話していく。刹那、エイルとイルーズは目を見開く。

 エルバード公国の内情が、不安定。

 相手の不幸を望むのは倫理的に反するが、強大な力を有しているエルバード公国は厄介な存在。今、エルバード公国の統率が取れているのは大公のお陰だが、跡取りであるミシェルはあの調子なので期待できない。そして不安定になっているのは、ミシェルが影響しているとフレイは読む。

 ミシェルは最大の理解者であるルークを切り、クローディアの聖域に勝手に足を踏み入れた。

 これが決定的だろう、信頼は失墜する。

「学園長が……」

「クリスティ殿が、どうした」

「在学当時、時期ではないと……言っていました」

「そうか、クリスティ殿が……」

「それだけ、大きな壁になると」

「クリスティ殿が言うのなら、正しいことだ。跡取りがあのような性格だが、上手くやっている」

「なら、大公が……」

 それについて、フレイは口を開くことはない。だが、思っていることは共通しているのだろう、フレイの眼光は鋭い。

 現在の状況で、エルバード大公が亡くなったら――

 確実に、エルバード公国は終わる。

 それを知ってか知らずか、ミシェルは自身の行動を改めることはない。それどころか煩く言い続けていたルークがいないことをいいことに、更に増長している。クローディアだけではなく母国の者にもいい顔をされていないのだから、ミシェルの未来は明るいとはいえない。

「僕達は、何を――」

「エイルは、親衛隊として守護を続けよ」

「わかりました」

「イルーズは、今までの通り不穏な動きがあったら、報告するように。公子殿の暴発が怖い」

 フレイの意見に納得できるのだろう、エイルとイルーズが同時に頷く。あのような人物ほど、暴発時に何を仕出かすかわかったものではない。予想の斜め上を行き、尚且つその暴発にシェラが巻き込まれたら一大事なので、フレイはエイルに守護をし続けるように命令する。