ロスト・クロニクル~後編~


「そうであってほしい」

「で、手紙に……」

「ならん」

「や、やっぱり……」

「当たり前だ!」

 ネタが詰まったとしても、絶対にラルフのことをネタに使ってはいけない。というのが、フレイからの命令。確かにエイルが言うように話が盛り上がるが、その反面失うモノも多い。フレイはエイルを見据えると、ラルフ以外でネタになり得る話はないのか――と、尋ねる。

「他は……」

「ないのか?」

「魔導研究会とか」

「なんだ、それは」

「魔導師に対抗する術を研究している会らしく、一度戦ったことがあり……それはそれで、面白く……」

「真面目な会なのか?」

「志は、立派だったと思います。ただ、手当たり次第勝負を抱いていたから、イメージが悪く……」

「なら、いいのではないか」

 父親の許可が下りたことに、エイルの顔が明るくなる。しかしエイルは、肝心な部分を話していない。この〈魔導研究会〉の総帥はラルフで、結成に至った理由も何ともラルフらしいもの。流石にその意味を話したら激昂されるのは間違いなく、ネタに使うのを却下されてしまう。

 許可を得たので、次の手紙にこの話を付け加えると父親に伝える。エイルの言葉にフレイは頷くと、シェラ宛の手紙は仕上がったのか聞く。それに対しイルーズは瞬時にエイルがしたためた手紙を差し出すと、シェラが喜びそうな面白い内容に仕上がっていると父親に話す。

 イルーズから手紙を受け取ると、書かれている文字を黙読していく。その間、特に表情を変えることはない。兄と違い全く反応を示さない父親に、エイルは書いた内容が気に入らなかったのかと危惧するが、最後まで読み終えると、フレイは一言「これでいい」と、口にする。

「良かった」

 兄に続き父親も手紙の内容を認めてくれたことに、エイルは安堵の表情を浮かべる。これで書き直しと言われたら、仕上げる自信はない。手紙を四つ折りにし机の引き出しの中に仕舞うと、先程とは違いフレイの表情は真剣なものへ変化し、同時に漂う空気も一変する。