最悪だったのは、汚すぎる身体で風呂に入ったことだろう。ラルフの入浴後は地獄絵図状態で、掃除を行ったメイド達の悲鳴が屋敷中に轟いたことは、エイルもイルーズも覚えている。そのような人物をネタにするのは不適切……というより、シェラに悪い知識を増やしてしまう。
シェラは、無垢なままでいて欲しい。
ラルフは悪い意味で異質な存在で、多くの者に迷惑を掛けている。だから彼という存在がメルダースで暴れていたという話は、あまり大事にしたくない。エイルとイルーズの脳裏に堂々と寛いでいるラルフの姿が浮かんだ途端、二人は同時に溜息を付いて項垂れてしまう。
「どうして、メルダースに……」
「あのように見て、頭が良く……」
「そうだな、頭が良くなければ入学はできない」
「進級試験は一回だけ失敗して、卒業試験は一回で合格。だから、縁を切ることができなかった」
「……そうか」
もっと常識を弁えた者と友人関係になってほしかったとイルーズは考えるが、ラルフと友人関係になってしまったのだから今更関係を切るわけにはいかない。おれも運命だと諦め受け入れるべきだが、いかんせん相手が相手なので、そう簡単に受け入れることは難しかった。
エイルとイルーズは父親のもとへ向かうと、ラルフのことをネタに手紙をしたためていいか尋ねる。すると二人の考えは正しかったらしく、ラルフが関わったネタに関して、フレイはいい顔をしない。
それどころか眉間に皺を寄せつつ、考え込んでしまう。「それに関しては……」とフレイは言葉を発するが、それから先が続かない。それだけラルフという人物はインパクトが大きい。そして、更に付け加えた言葉は「できるものなら、記憶から全てを抹消したい」という本音。
「と、父さん」
「とんでもない人物と、友人になったな」
「向こうから、引っ付いて来て……」
「クリスティ殿の苦労が、目に浮かぶ」
「かなり、苦労していました。メルダース創立以来の物凄い問題児と、申していましたので……父さんに話した通り、あいつはメルダースの破壊神です。メルダースに多大なる被害を及ぼしたのは、後にも先にもあいつだけでしょう。あの場所にいるので、今は大人しく……」


