兄の説明に、エイルは納得する。また、シェラの立場を思えば、これくらいのことをしないといけない。エイルが了承してくれたことにイルーズは頷き返すと、この手紙をシェラに手渡すのは一週間後にすると話す。このことにエイルは引っ掛かるも、両国の距離を考えればそれくらいが妥当。
シェラが次にどのような質問をしてくるかわからないが、ネタは多い方がいい。手紙をしたためるのに困らないよう、メルダースであった出来事をメモに纏めておかなければいけないとエイルは考える。しかし学園在学時の思い出の大半がラルフ絡みなので、表情が歪む。
「どうした?」
「メルダース時代の悪友だけど……」
「水晶の発掘場に行った者か?」
「そう」
「その者がどうした」
「メルダース時代の思い出の大半が、その人物の者で……シェラ様に教えていいものかどうか……」
「考えるな」
「シェラ様におかしなことを教えたと、父さんに怒られそうで……だけど、ネタとしては盛り上がりそうで……」
エイルが考えるように、イルーズもまたネタは多い方がいいと思っている。しかし、あのような無礼者のネタとなると、考えないといけない。イルーズは腕を組みつつ暫く唸り声を発していると、父親に一度尋ねておいた方がいいと判断する。また、黙っていてもいいことはないと付け加える。
「兄さんは?」
「一緒に行こう」
「有難う」
「あの無礼者が関わっているのなら、仕方ない」
「昔からそうだったけど、ラルフはあらゆる面で……卒業後は、もう関わらないと思っていたけど……」
「まさか、こうなるとは」
「運命って、わからないよ。これも、女神様の計らい……とは、あまり思いたくないんだけど」
「同感だ」
イルーズもラルフにいい印象を抱いていないので、嘆息が続く。いくらエイルと友人関係にあるとはいえ、悪臭を漂わす汚い姿でソファーの上で寛いでいる。またメイドにあれこれと頼みごとをし、彼女達の機嫌を悪くする。礼儀と遠慮が欠落しているのかと思われるほど、ラルフの評価は最悪。


