ロスト・クロニクル~後編~


「本来、あの方がこの国を継ぐに相応しい。エクセリオンが拒絶の意志を示したのも、その証拠だ」

「守護者殿が、身を挺して……」

「普通、それで気付く」

「しかし、気付くどころか増長した」

「……そういうことだ」

 シードはミシェルに対し滅多に本音を漏らすことはしないが、苦渋に満ちた表情から相当苦労していることをイルーズ悟る。ミシェルの魔の手からシェラを守護する他、多くの部下達を統率しないといけない。そして今回ミシェルの我儘に付き合わされているのだから、心労が溜まる。

 だから、思う。

 過去の出来事を――

「ルシオン様が側にいられたら、シェラ様もあのようにならなかっただろう。そう、父も言っている」

「仲のいい兄妹と聞く」

「シェラ様は、若い。だから家族が側におらず、また失われたことは心に大きな傷を負ってしまう」

「だが、ミシェル殿は違う」

 何かの切っ掛けでミシェルがシェラと結婚しても、彼が支えとなるわけではない。ミシェルはシェラの大事な家族を奪い、今の状況を生み出した。心を閉ざしている今も本能で察するのだろう、ミシェルが側にいることがわかると微かに身体が震え出すことをシードは知っている。

 ミシェルは敵。

 側にいて欲しくない。

 だからシェラは、そのような反応を見せる。

「知らなかった」

「話していなかったから」

「覚えておく」

「ルシオン様が側にいたら、ミシェル殿の行為を許さないだろう。いや、存在そのものか……」

「エクセリオンを守護している女神像が、あのような姿になってしまったのは継承者不在が影響しているのだろう」

 イルーズの疑問に、シードは頷き返す。そもそもエクセリオンに触れられるのは、正当な王位継承者のみ。女神に仕えている大神官のオルデランさえ、エクセリオンの側に近付けば容赦なく茨が攻撃を仕掛けてくる。それだけ女神は、正当な後継者の存在を第一に考えていた。