先王の前で跪き、剣を振るうと誓った。
しかしその先王は今、この世にいない。
「フレイ様が、隊長の地位を譲ったのは……」
「腰痛と言っていた」
「それは、建前だろう」
「父の影響力は、今もって健在だ。疎ましく思っている者も多く、表立って活躍することができない。だからシード……お前に後任を譲り、陰で支える道を選んだ。私も、父の期待に添えるようにならないといけない。弟に関しては、シードの評価次第になってしまうが……」
「よくやっている」
「本当か?」
「兄の前で、嘘を言ってどうする」
「それを聞いて、安心した」
兄として歳の離れた弟がシッカリやっているかどうか気に掛かるもので、エイルがメルダース在学時代、真面目に授業を受け教師達の逆鱗に触れていないかどうか、あれこれと気を悩ましていたという。それを聞いたシードはクスっと笑うと、一言「過保護」と、言い返す。
「いいだろう」
「……わからないわけでもない」
「ところで、ひとつ聞く」
「何だ」
「今、王家はシェラ様一人」
「勿論、そのことはわかっている」
「もし、シェラ様があの方と結婚なさったら……」
「それはさせない」
シード曰く「それは、絶対にあってはいけないこと」と、言い放つ。シェラがミシェルと結婚してしまったら、この国がどうなってしまうのかわかり切っている。今も私物化されているというのに、これ以上のことをされてしまったらどうなってしまうのか。泣くのは、多くの民である。
「忠誠は」
「誓うわけがない」
「同感だ」
ミシェルに忠誠を誓うくらいなら、今の地位を捨ててもいい。それだけの覚悟を持って、シードはミシェルの結婚を阻止する。シードの決意にイルーズは頷くと、一人の人物の名前を口にする。刹那、シードの身体が過敏に反応を見せると「あの方以外、忠誠を誓わない」と、弱弱しい声音を発する。


