しかし、いないというのは有り得ない。この世界には世界最強と呼ばれている魔女がいるので、彼女が乗り出して来たら流石のミシェルも敵うことはできないだろう。といってクリスティに助けを求めるわけにもいかず、何よりこの状況で手を貸してくれるかどうか怪しい。
「しかし、エイルは確約を得た」
「それでもクリスティ殿が乗り出してこないのは、その時ではないと読んでいらっしゃるのだろう」
「その時は――」
それに対し、シードは何も答えることはしない。それでもイルーズの言いたいことの意味は理解しているので、微かに口許が緩む。だが、それに至る前に立ち塞がる壁を崩していかないといけない。今彼等の前に立ち塞がっているのはミシェルの我儘で、これを崩す術を探す。
「正面突破か」
「それしかない」
「やはり、それに行き当たるか」
「あれこれと策略を練ったところで、あの我儘で上手く流されてしまう。それなら、練らない方が……」
「……確かに」
「すまない。いい意見が言えなく……」
「いや、話を聞いてくれただけで有難い。しかし、王家の者はこういう人物が多いのか……」
シードが何気なく発した言葉に、イルーズは訝しげな表情を作る。何故、そのような言葉を――と考えるが、ミシェルの姿を見ているとこのような疑問を抱くのは仕方がない。あの人は特別か、そうでないか――シードの疑問にイルーズは、ミシェルが特別すぎると話す。
本来、上に立つ者は下の者に目を向けないといけない。そして王家の者だけがいたところで、国は成り立たない。それを理解している者が上にいない国は不幸というが、エルバード公国がそれに当て嵌まるだろう。現にミシェルは、同国の者からいい印象を抱かれていない。
「先王が生きておられたら……」
「素晴らしい方と、父は言っていた。生きておられたら、今のような状況になってはいなかった」
思い出し語り合ったところで、死者が生き返ることはない。また、あの時に戻ることができない過去を思わず前に進まないといけないが、失った者が偉大過ぎるとついつい過去を振り返ってしまう。それだけ立派な人物で、フレイは先王の命が失われた時に涙を流した。


