ルークがいれば、どれほど助かったか。
しかし求めるべき人物は主人の反感を買ったので、この場にはいない。このような状況に陥ると、惜しい人物が切られてしまったと痛感する。もしルークが側にいれば、このような我儘を許さず意見を言っていただろう。だが、それが原因となってしまい守護者の地位を失う。
今、ミシェルに面と向かって言える者は――
残念ながら、誰一人としていない。
ミシェルの性格に呆れているのが半分で、その後ろにいる彼の父親が恐ろしいというのが半分。いや、正しい比率でいえば後者に比重が掛かるだろう。だから今回の件もエルバード公国側は黙認し、クローディア側に丸投げ状態。結果、ミシェルを更に増長させていく。
「断ったことにより、影響があると考えます」
「あの方のことだ、あれやこれやと言い掛かりをつけて来るだろう。ところで、イルーズを呼べるか?」
「兄を?」
「話しがしたい」
「それだしたら、隊長自ら……」
「そうしたいのは山々だが、直接行くとどうも周囲の目が悪くなる。しかし、兄弟となれば……」
「確かに」
「ただ、今ではない」
「では、いつ」
「夜更けに」
シードからの命令に、エイルは素直に応じる。シードとイルーズは友であると同時に、互いの相談に乗ることが多い。二人とも何かと忙しく、中枢に関わる場所に席を置いている身。他者に相談できなくともこの相手なら腹を割って相談できるというのが、二人の関係だった。
ミシェルの件はイルーズも頭を痛めていることを知っているので、相談すれば適切な回答を得られるだろう。そのことを期待し、シードはエイルにイルーズを呼んで欲しいと頼んだ。
その夜――
呼び出しに応じたイルーズが、シードの前に姿を現す。
突然の呼び出しに、イルーズの表情は優れない。それは決して不愉快というものではなく、シードが直接呼び出したのではなく間にエイルが入っていたというところが関係していた。「何かあったのか?」シードの顔を見ると、イルーズは真っ先にそのように質問をしていた。


