「お、親方」
「元学友とはいえ、無理を言うな」
「しかし、こういう機会でないと……」
「仕事、サボりたいんだろ」
エイルの的を射た指摘にラルフは間髪いれずに否定するが、言葉の端々が震えていた。何ともわかり易い反応に再び拳が落ちると、今度は床の上で伸びてしまう。まさかこのような理由で引き留めていたとはベーゼルも予想していなかったのだろう、怒りのオーラが包む。
「こいつはこういう面がありますので、厳しく鍛えた方がいいです。皆様の足を引っ張ります」
「なるほど」
「という訳ですので、宜しくお願いします」
「エ、エイル」
「僕は行く」
「い、嫌だ」
「無理を言うな」
ベーゼルに取り押さえられながらも、ラルフの心の悲鳴が響く。しかしエイルは先程言ったようにラルフと遊んでいる暇などなく、早く城に戻ってこのことをシードに報告しないといけない。エイルは馬に跨ると速度を上げ城へ急ぐと、到着と同時にシードのもとへ出向いた。
◇◆◇◆◇◆
「やはり、そうか……」
「申し訳ありません」
「いや、謝ることはない。この反応は仕方がないことであり、此方が一方的に無理を言った」
「しかし、いかがいたしましょう」
「返答次第で、ミシェル殿には……」
「納得……するでしょうか」
「して頂かないといけない。こう言ってはなんだが、我儘が通じないことも学習して頂かないと……」
これこそが、シードの本音だろう。ミシェルはいい年齢をしながら、周囲が何でも言うことを聞いてくれると勘違いしている。それに公子という身分が大きく関係しているのだが、年齢を考えるといかがなものか――とシードが考えるが、流石にエイルの前でそのことは口にしない。


