ロスト・クロニクル~後編~


 今回ばかりは強制的に言うことを聞いてもらわないといけないので、エイルはラルフの首根っこを掴んで引っ張っていく。その間も暴れ落ち着きのないラルフだが、そのような我儘が聞き入れられるわけがなく、エイルは「大人しくしないと、魔法を直撃させる」と脅す。

 流石にそのように言われたら、大人しくしないといけない。エイルの魔法力はメルダース時代嫌というほど知っており、大怪我では済まされないので逆らうことは得策ではない。ラルフは大粒の涙を流しながら引き摺られ、苦手としている人物のもとへ連れて行かれるのであった。




 エイルの話を聞きシードからの手紙を読んだベーゼルは、いい表情をしなかった。本来シードの手紙はラルフに手渡す物であったが、あのように拒絶反応を見せている者に渡すわけにはいかない。だからベーゼルに手紙を手渡したのだが、反応は予想通りのものだった。

「如何でしょうか」

「お断りは?」

「できましたら……」

「そうでしょう。この手紙に書かれているように、エルバード公国の公子がいらっしゃいますので……」

「勿論、皆様方の気持ちは存じています。しかし、こればかりはどうも……申し訳ありません」

「いえ、謝ることはありません。其方の気持ちも理解できますし、ただ即答に関しては……」

 本当は早く返事を欲しいのだが、だからといってせかすわけにはいかない。エイルは一度城に戻り、このことを報告しておくと伝えるとベーゼルに話す。即答できなかったことに頭を垂れるが、エイルは咎めることはしない。これはある意味、無理強いといっていいのだから。

「戻る?」

「そのつもりだけど」

「折角、来たのに」

「お前は、仕事をする」

「えー、寂しい」

 エイルの「城に戻る」という発言を聞いたラルフは、引き留めようとしているのか必死に食い付いて来る。しかし用事が済んだのでこの村に長く止まるわけにはいかず、ラルフと遊んでいる時間はない。刹那、二人の話を横で聞いていたベーゼルはラルフの頭頂部に拳を落とす。