ロスト・クロニクル~後編~


 ルークの立場の変化は城全体に広がり、親衛隊の面々の耳にも届く。特にこの件で驚きを隠せないでいたのはシードで、当初部下の報告に我が耳を疑った。互いに厳しい言葉を言い合うが心のどこかで好敵手(ライバル)と認識しており、ルークはこのまま本国に帰るのか気に掛かる。

 しかし、ここまでするとは――

 感情のままにルークを切り離したミシェルに、シードは言葉が出ない。ミシェルにとってルークが、唯一の味方といっていいだろう。一国の公子とはいえ、彼の態度に多くの者が辟易している。それを証明するかのように、シードはミシェルの悪口を何度も耳にしていた。

 それらの性格を全て受け入れ、尚且つ主人のことを思い意見し続ける。それは相手の成長を願い、大事に思っているからこそ口を酸っぱくする。本当に相手のことを思っていなければ、厳しい言葉を言うことはない。相手を持ち上げ気分が良くなる言葉を言い続ける者は、味方ではない。

 真の味方はルークのような存在なのだが、ミシェルは口煩いルークを煙たがる。だから側にいることを拒み、今は一人で城の中をふら付いている。本人は煩い人物が側にいなくなったことに清々しているのだろう、晴れ晴れとした表情をしているとシードは部下から聞いていた。

 この先、何を起こすのか――

 側にいて止める者がいなくなった今、ミシェルが何を仕出かすかわかったものではない。エクセリオンの件以上のことを仕出かすのではないかと、シードは危惧してしまう。流石に、これ以上この国で好き勝手にされるわけにはいかない。また、幾つ侮辱すればいいのか――

 珍しくシードは苛立ちを覚えるが、それを周囲にぶつけることはしない。その時、廊下が騒がしくなり、乱暴と呼べる足音が響き渡る。その音はシードの私室の前で止まると乱暴に扉が開かれ、シードの前に姿を現したのは彼の部下。そして何かトラブルが発生したのか、顔色が悪い。

「どうした」

「ミシェル様が、水晶の発掘現場に行きたいと……」

「……そうか」

「で、我々が守護を――」

「あちらにも兵士がいるじゃないか」

「そうなのですが……」

 ミシェルの話では、同じ国の者同士の方が話が通し易いのではないかという。また案内には最適で、何か面白いことをしてくれるのではないかとミシェルは期待しているらしい。相変わらずの言い分にシードは顔を顰めると、こればかりは即答できないと部下に言い返した。