今回の手合わせはミシェルの激怒により、一方的に終了する。ミシェルに従えていた者達は彼の後を追い城へ戻ってしまったので、親衛隊の訓練所に残っているのはシードを含め新人三人。
自身の守護者に対しあのような仕打ちをするミシェルの姿に、アルフレッドは汚い言葉で罵るが、シードの鋭い言葉で制される。相手がどのような性格であっても、立場を考えれば罵っていいものではない。
シードの叱責に、アルフレッドは深々と頭を垂らす。不真面目のアルフレッドでも、隊長命令ということで彼の言葉は素直に従う。いや、それ以前にアルフレッドはシードを敬愛している。しているからこそ命令に素直に従い、このように深々と頭を垂れるのであった。
「エイル」
「はい」
「あのことを話しておいて欲しい」
今回の結末は、ミシェルやシードが望んだ結末ではない。唯一自分の理想を達成したのはルークか。いいように利用されたといえばそれまでだが、今更彼の行動をどうこう批判できない。
シードの命令を受け取ったエイルは、了承の返事を返す。物分りのいい部下にシードは頷き返すと、使用していた剣を納めつつ、一言「先に戻る」と言い残し、その場を後にした。
「なあ、エイル。隊長が言っていた“あのこと”って、一体なんだ。まさか、とんでもないことじゃないだろうな」
「そんなに大事じゃないよ。今回の手合わせで隊長は、負けようとしていた……という話だよ」
「大事じゃないか!」
「でも、仕方ないよ」
エイルの説明に、アルフレッドが食い付いてくる。アルフレッドにしてみれば、何が何でもシードに勝利してほしかった。ミシェルの言い方に似ているが、ルークをぶっ飛ばしてほしいと考えていたという。
それが、最初から負けようとしていた。シードの考えが理解できないアルフレッドは、激昂する。エイルは激昂するアルフレッドを諌めつつ、シードの本心を語っていく。現在の母国の状況とミシェルの子供っぽい性格を考えた場合、シードは自分が負ければ国が安定すると結論に至った。
しかし結末は、最悪そのもの。ルークが負けシードが勝利してしまい、ミシェルが切れた。守護者のルークに当り散らし、石まで投げる始末。こうなると、お手上げ状態だ。エイルの説明にアルフレッドは、苦笑いを浮かべる。あのミシェルは、今回の勝敗について納得がいっていないのだから。


