女神よ。
我々を救いたまえ。
フレイは女神への信仰心が篤いが、このように明確に祈りの言葉を口に出すことはしない。しかし今日は祈りの言葉を口に出し、これを心の平穏に繋げようとする。それだけエクセリオンの件は衝撃的で、エメリスへの信仰そのものを否定されているように思えてしまう。
このまま、彼等の振る舞いを許していいわけがない。それに向こう側から与えられた絶好のタイミングを、フレイが見逃すわけにはいかない。王者に相応しくない者を玉座に座らせるわけにはいかず、それを行ってしまえばクローディアは確実に衰退の道を辿ってしまう。
だから――
フレイは決意を表すように、力強く頷いた。
◇◆◇◆◇◆
数日後――
フレイとオルデランの話し合いが行われた。
表立っては女神への祈りを捧げに、大神殿に向かった。としたが、本当は極秘会談を行う為だ。オルデランもどうしてフレイが訪ねて来たのか瞬時に理解したらしく、自身が普段している部屋に招く。そして神官達には「久し振りに、積もった話をしたい」と言い、人払いを行った。
「やはり、あの件ですか」
「息子から聞きました」
「まさか、あのようなことを……」
「目撃した者には……」
「勿論、口止めしてあります」
「それが、宜しいでしょう。知られては、民の不安を誘います。今は何とか平穏を保てていますが、これで何かがあったら……収拾が付かなくなってしまい……息子にも話しましたが、あの者は玉座に興味があるわけではありません。真の目的はシェラ様ですが、この国ではエクセリオンは王位継承の象徴。見方によっては、玉座を狙っていると捉えかねません」
「女神は、拒絶をなさった」
そのことはイルーズの口から聞いていたが、オルデランの口から直接聞いた方が安心できる。フレイの表情が微かに緩んだことを見逃さなかったオルデランは、女神の意志がエクセリオンを守護しているので大丈夫だと付け加えるが、それで安堵できるほど現実は生易しくない。


