「大神官殿は?」
「沈黙を続けています」
「確かに、それが……」
流石にエクセリオンの件は、公にすることはできない。公にしてみれば民の動揺を誘い、根も葉もない噂が広がってしまう。それを防ぐには周囲にこの出来事を漏らさないとこだが、人間の口に戸を立てられない。たとえ目撃者が神官といえ、油断していると噂が広がる。
いつまでも、抑えられるか――
正直、時間の問題といっていい。
「正当な王位継承者が……」
「それを言うな」
「ですが……」
精神的に相当堪えたのか、珍しくイルーズが弱音を吐き項垂れる。しかし嘆いたところで、自分達が現状を改善できるわけではない。それを理解しているからこそフレイはきつく目を閉じ、沈黙を続ける。そして思うのは、真の王位継承者であるルシオンの存在だった。
あの方が――
だが、これさえも口にしない。
長い沈黙の後、フレイは閉じていた目を開くと、エイルの名前を口にする。聖域でミシェルの無礼を目撃していないが、目撃した親衛隊の者達から耳にしているだろう。まさかと思うが、エイルがこれを周囲に口にすることは――と、低音の声音で、イルーズに尋ねていた。
「勿論、口外はしません」
「当たり前だ」
「もし、口外を――」
「斬り捨てる」
「エイルには、そのように……」
「それでいい」
フレイを含めイルーズやエイルは口が堅いので問題はないが、先程からフレイはそれ以外の存在が気に掛かる。誰かに相談できればいいが、このようなことを相談できるのは限られている。フレイを尊敬している者は多いが、だからといって口の堅さが保証できるものではない。
一度、オルデランと面会し対策を練った方がいいか。これにより敵側はいい表情をしないだろうが、だからといってこのようなことを相談できるのはオルデランしかいない。フレイはイルーズにオルデランとの面会の中に入って欲しいと頼むと、いつになく厳しい表情を作る。


