本国は、何と言うか――
勿論、簡単に想像できる。
これに関してルーク自身、主人を守り切れる自信はない。ミシェルはそれだけのことをしてしまい、日頃の行いが悪い。これを乗り切るには態度を改めないといけないが、あの調子では難しいだろう。ルークは言葉では表さないが、ミシェルの将来に強い不安を覚える。
ルークはオルデランに対し深々と頭を垂れると、ミシェルの後を駆け足で追う。ルークが立ち去った後、オルデランは盛大な溜息を付くと、茨が幾重にも巻き付くエクセリオンを一瞥する。他国の者に触れられずに済んだが、だからといって簡単に済まされる問題ではない。
「だ、大神官様」
「この件は、他言無用だ」
「どうしてでしょうか」
「民に、いらぬ心配を掛けるわけにはいかない。聖域は、民の心の支え……それを他国の者に……」
オルデランの言葉に、神官達が押し黙る。ミシェルに聖域に立ち入られたばかりではなく、エクセリオンを触れられそうになった。エメリスへの信仰心が高い彼等にとって、身を引き裂かれんばかりの屈辱といっていい。中には、眼元に涙を浮かべている者もいるほどだ。
「もう、これ以上は……」
「わかっておる」
どうして、これほどのことを――
オルデランもまた、神官と同等の感情を持っている。しかし多くの者を導く身分として、感情を表面に表し周囲の動揺を招いてはいけない。一見、堂々とした立ち振る舞いを見せているが、感情が一致することはなく、心の中でエメリスに今回の失態を詫びるしかできない。
「さあ、我々も――」
「……はい」
エメリスに仕えている身分とはいえ、神聖な場所に長くいていいものではない。オルデランの言葉に神官達は背筋を伸ばし一斉に頭を垂れると、振り返ることなく立ち去る。それに続くように親衛隊の面々はオルデランに頭を垂れると、シードとリデルに報告に向かう。
全員が立ち去ったことを確認すると、最後にオルデランが聖域を後にする。全ての人間が立ち去った後、動いていた茨が静寂を取り戻す。そして見る見るのうちに茨は植物から白い石へと変化していき、エメリスが認めるエクセリオンを真の所持者が現れるまで守り続ける。


