自分の技量を弁え、どうして自分の立ち位置を理解しようとしないのか。主人の無知と愚かさにルークは苦虫を噛み潰したような表情を作るが、この状況では何を言っても聞いてはくれない。ふと、ミシェルがルークの名前を呼ぶと、衝撃的とも取れる発言を言い放つのだった。
自分がエクセリオンを手に入れるまでの間、あの鬱陶しい茨から自分を護れ。それが、ルークに下した命令。流石に敵国の者とはいえ、オルデランはルークがどのような人物か知っている。知っているからこそ、大事な部下をそのようなことに使うことが許せないでいた。
どうして、部下を大切にできない。
どうして、道具として扱うのか。
オルデランの訴えに、ミシェルは鼻で笑い返す。部下をどのように扱うかは他人にとやかく言われる問題ではなく、それに王者に奉仕するのが当たり前のこと。それにその者が怪我を負っても自分には関係なく、ただ実力がなかっただけのこととミシェルは語っていく。
いつもであったら、ルークはミシェルの命令を受け入れていた。身を挺して主人を護るのが守護者の役目だが、今回は命令を受け入れることはできない。エクセリオンが拒絶している時点で現実を受け入れ諦めないといけないが、ミシェルの頭の中にあるのはシェラの存在。
「どいつもこいつも……」
「……ミシェル様」
「馬鹿にするな!」
自分は、誰よりも優れている。この場所にいる者全員が跪かないといけないほど、立派な血を引いている。それだというのに周囲からあれこれと言われ、自分の偉さを認めようとはしない。ミシェルは公子とは思えない言葉の数々を言い放つと、何処かに行ってしまう。
勝手に立ち去ってしまうミシェルの後を追わないといけないが、その前にオルデランに詫びないといけない。ルークは深々と頭を垂れると、ミシェルに代わって主人の無礼を詫びていく。それに対しオルデランは頭を振ると、ルークが代わって謝ることではないという。
「さあ、行きなさい」
「で、ですが……」
「追わないといけない」
オルデランの優しい気遣いに、ルークは何も言えなくなってしまう。ただ頭を垂れ続け、懐の深さを知る。同時に、今回のミシェルの馬鹿げた行動を本国に連絡しないといけないと思う。今まで本国も黙認し続けてきたが、流石に今回の件は議題に上がらないわけがない。


