自分こそ、この国を統治するに相応しい。いや、両方の国を滑るだけの力量を持っていると勘違いし、オルデランに言い放つ。その間も茨はミシェルを拒否し続け、エクセリオンを護り続ける。これだけを見れば現実を理解できそうだが、ミシェルは理解しようとしない。
目の前に自分が欲している物があるというのに、手に入れることができない。それが苛立ちとして募り、とうとう爆発させてしまう。先程の地団太とは違い、此方は癇癪を起している子供というべきか。一国の公子とは思えない態度に、オルデランを含め神官達が驚く。
こいつが。
こんな奴が――
女神に仕えている立場ながら、神官達の心に過ぎるのは汚い言葉。だが、ミシェルの態度を見ているとそのような考えに至るのはわからなくもなく、神官達の表情の変化にオルデランは何も言うことはできなかった。ただ、沈黙の中で、ミシェルにきつい視線を向ける。
その時、一人の男が姿を現す。その者はルークで、頭に巻かれている包帯が赤く染まっている。それに傷口の痛みが酷いのか、表情が微かに歪んでいる。そのような状況でも聖域に駆け付けたということは、主人の身が心配で何かを仕出かさないか見守りに来たのだった。
「ミシェル様」
「煩い奴が来た」
「ミシェル様!」
「ああ、騒ぐな」
「貴方様が、そのような態度を……」
ルークの登場にますます気分を害したのだろう、決して視線を合わせようとはしない。それどころか邪険に扱い、自分の守護者なら静かに見守っていろと言いだす。だが、この意見が聞き入れられるわけがなく、そもそもクローディアの聖域に立ち入った時点で危険すぎる。
エクセリオンを諦め、城に戻って欲しい。
必死に言い聞かせるが、これさえもミシェルの耳に届かない。ルークの懇願にミシェルは鼻で笑うと、自分が母国とクローディアの両方を統治するようになれば、父親も喜んでくれ両方の民が幸せになれると話す。だからエクセリオンを手に入れるのだと、力強く語る。
その話が自分の意志を示すものではなく言い訳だと、ルークの他オルデランも知っている。シェラを妻にしたいからこそ、エクセリオンを我が物にしようとしている。簡単に自分の意見を変え、自分に都合がいいように誤魔化す態度に、王者としての器は微塵も感じられない。


