ロスト・クロニクル~後編~


 これほど言っても全く聞き入れようとはしないミシェルに、オルデランの嘆きは強い。どうして、周囲を見ようとしないのか。どうして、意見に耳を傾けないのか。そもそもミシェルは信仰心が篤い方ではなく、生まれ持って獲得している権力こそが全てと考えていた。

 だからこそ好き勝手に振る舞い、クローディアの侵してはいけない場所に土足で踏み込む。ミシェルはオルデランに暴言を吐き捨てると、茨がきつく巻き付くエクセリオンのもとへ向かう。刹那、茨が静かにしていた蠢き出し、これ以上近付いてはならないと威嚇しだす。

「な、何!?」

「それ以上、進むことはなりません。お命が惜しいのなら……女神のお怒りに触れてしまいます」

「命令するな!」

 言葉では強気に出るが、それに態度が伴わない。威嚇し続ける茨に恐怖心を抱いているのか、ミシェルの両脚は小刻みに震えている。それでも手に入れたいという意思は強いらしく手を差し延ばすが、茨の一本が素早く動き、ミシェルの手の甲を払い除けるように叩く。

 手の甲から伝わる激痛に反射的に手を引っ込めると、目の前でゆらゆらと揺れている茨を凝視する。これをなんとかしなければ、エクセリオンを手に入れるどころか近付くこともできない。といって茨をどうにかするほどミシェルに技量があるわけでもなく、ましてや勇気がない。

「これ以上は、お止め下さい。これで、わかって頂けたはず。貴方様は、女神が認めてはいない」

「認めようが、認めまいが……」

「本来、エクセリオンに触れていいのは、真の王位継承者。ですが、貴方様は……おわかり頂きたい」

「僕は、違うのか!」

 このように面と向かって拒絶されると、腹立たしい以外なにものでもない。ミシェルは地団太を踏むと、自分の血がいかに素晴らしいものかと語っていくが、オルデランが首を縦に振ることはない。今、女神に選ばれない理由として、王者として一番重要な部分が欠けている。

 民を思う。

 民の平穏を願う。

 それが上に立つ者の役目で、齎された権力を思うがままに利用していいものではない。ミシェルはそれが欠落し、一方的に批判を繰り返す。それにクローディアを滅ぼそうとしている人物に女神がエクセリオンを渡すわけがなく、それどころか排除を試みようとしている。