「お断りします」
「どうして?」
「貴方様は、王家の者ではないからです」
「僕は偉いよ」
「しかし、クローディアの者ではない」
オルデランは凛とした態度で、ミシェルが聖域に立ち入ることを拒み続ける。どうして、敵対する国の者を入れないといけないのか。それに聖域はクローディアの信仰の象徴のひとつで、宗教のなんたるかを理解していない、ましてやミシェルは私利私欲に利用しようとしている。
事の重要性に気付いていない者に、聖域を蹂躙されたくない。また、目の前にいる人物の父親が、王家の人間を殺害した。そして今、シェラに色目を使い自分の妻にしようとしている。一部始終を知っているオルデランにしてみれば、ミシェルの存在そのものを嫌った。
しかし大神官という立場上、私情で暴言を吐いたり行動に移したりするわけにはいかない。オルデランはミシェルの言葉を上手くかわしながら、どのように言えば諦めていくか考えていくが、このような人物は人の意見に耳をかさず、自分の意見を無理に押し通してくる。
ミシェルに似た人物を何人も見ているので、オルデランは下手な説得は逆効果をわかっている。わかっているがこのまま引き下がるわけはいかず、これさえ奪われてしまったらこの国の者は拠り所がなくなってしまう。だからこそ、オルデランはミシェルの立ち入りを拒む。
「頭、固いね」
「そのようなことはありません」
「固いよ」
聖域に立ち入れてくれない時点で、ミシェルはオルデランを頭が固く融通が利かない人物と見ている。だが、どのように言われても立ち入りを許可するわけにはいかず、ミシェルの前に立ち塞がる。業を煮やしたミシェルは顔を歪ますと、これ以上話を続けたくないと言い放つ。
すると何を思ったのか、ミシェルはオルデランの静止を振り切って、大神殿の奥へ走って行く。先が読めないミシェルの行動に、オルデランは周囲にいた者達に、聖域に入れてはいけないと命令する。そして自分も後を追うが、年齢が年齢なので途中で息を切らしてしまう。
それでも、ミシェルに好き勝手にさせてはいけない。その思いで身体を動かし聖域に向かうが、息切れを起こしているので、上手く身体を動かすことができない。呼吸を整える為にその場に立ち止まっていると、シードの命令で大神殿にやって来た親衛隊に発見された。


