ミシェルは自分の地位を前面に出し、相手に無理難題を吹っ掛ける。また、先程のように相手が怯まなければ、父親の名前を出し脅しに掛かるのだから頭が痛い。これほど面倒で厄介な相手は滅多におらず、流石の大神官の手を焼くのではないかとシードは危惧してしまう。
「行く」
「傷はいいのか?」
「立ち入る前に、ミシェル様を止めなければ……」
「しかし、それでは……」
「構わない」
ルークにしてみれば、ミシェルがクローディアの聖域に立ち入った方が問題だという。これに関してはミシェルの父親も庇うことはできず、今以上に国同士の関係が悪化してしまう。流石にそれだけは避けなければいけず、だから自分が行って何が何でも主人を止めるという。
「悪く……か」
ミシェルが語る言葉を、シードは素直に受け止めることはできないでいた。国同士の関係を心配するというのなら、他国に侵略しなければいい。一方的に侵略し、シェラ以外の王家の者を殺害した。それだというのに、そのようなことを言うとは――珍しく、苛立ちを覚える。
しかし怪我人をそのままにしておくほど、シードは悪魔ではない。侍女を呼び寄せるとルークの手当を任せ、自分はリデルと共にシェラを彼女の寝室へ連れて行くことにする。怪我を手当てしてくれることにルークは素直に感謝するが、それに対しシードは無言を通す。
それ以上は、何もしない。
そのように言いたいのか、立ち去るシードは冷たかった。シードの後を追うように親衛隊の面々が続くが、途中でアルフレッドが脚を止める。ルークの行動が気になったのか、それとも興味が湧いたのか彼を凝視する。アルフレッドの行動に気付いたエイルとシンは同時に身体を突っ突くと、強制的に連れて行く。
何をしている。
そう、怒りながら。
◇◆◇◆◇◆
突然のミシェルの登場に大神官オルデランは、瞬時に相手の疾しい心情を見抜く。一方ミシェルは子供っぽい表情を浮かべながら、聖域に立ち入り女神に認められたいと話す。彼の頼みにオルデランは冷静に対応し続けるが、やり取りを聞いていた者達の顔は真っ青だった。


