ロスト・クロニクル~後編~


 その場所には、クローディアの初代国王がエメリスから賜った神剣エクセリオンが祀られ、立ち入っていい人物は限られている。またエクセリオンに触れていいのは真の王位継承者のみで、それ以外の人物が触れれば大いなる災いが訪れる――と、まことしやかに語られている。

 ミシェルは、エクセリオンを手に入れようとしていた。これを手に入れれば女神に認められ、尚且つクローディアの玉座に座ることができる。そしてシェラと結婚し、二つの国を統治したかった。だから何が何でも手に入れようとし、ミシェルの耳に周囲の忠告は届かない。

「父上に頼むぞ」

 ミシェルの言葉に、シードの眉が動く。彼が言いたいのは自身の父親に頼み、この国をめちゃくちゃにしてやるというもの。徹底的に潰し、国民がどうなってもいいのか。血を流したくないというのなら、目の前から立ち去れと言いたいのだろう、完全に父親の力頼みだ。

 正直、ミシェル自身は小物で恐れるに足りないが、問題は彼の父親の方だろう。フレイの話では、息子と違い頭が切れる人物。下手に敵に回せば、何を仕出かすかわかったものではない。フレイの言葉を思い出したシードは、渋々ながらミシェルに道を譲るしかなかった。

 シードが道を譲ったことに、ミシェルはフンっと鼻を鳴らす。偉い自分に従っていればいいと考えているのか、相変わらずミシェルの態度は大きい。あのような人物から、どうして精神年齢が低い子供が生まれてしまったのか――これこそ謎だと、フレイは言っていた。

 立ち去るミシェルを一瞥した後、後方で待機していた部下に目配せする。「大神官にこのことを――」と言っているのだろう、数名の親衛隊隊員がミシェルの後に続く。本来であったらシード自ら赴いた方がいいが、シェラを一人にしておくわけにはいかないので、部下に任せた。

 シードは踵を返し蹲っているルークの側に行くと、そっと彼の目の前に手を差し出す。差し出された手を取ることにルークは躊躇いを見せていたが、怪我を負っている今、やせ我慢は傷口に悪い。手を取り立ち上がると、主人が無礼な行動を取ったことを代わって詫びる。

「謝って済まされる問題ではない」

「……わかっている」

「何もなければいいが」

 ミシェルがエクセリオンに触れたことにより、女神の逆鱗に触れてしまったらどうなってしまうのか。導き出されるのは最悪な結末で、言葉に出すことはしないが、とんでもないことをしてくれたと愚痴る。大神官が止めてくれればと淡い期待をしてしまうが、難しい。