ロスト・クロニクル~後編~


 手っ取り早く練習相手を見付けたいというのなら隊員の中から選べばいいが、果たしてアルフレッドの相手になってくれる奇特な隊員がいるだろうか。アルフレッドの馬鹿力は隊の中でも有名で、相手になって欲しいと頼んでも首が縦に振られることはなく、それどころかいい顔はしない。

 そしてエイルの的を射た意見に、アルフレッドは返す言葉が見付からない。沈黙を続けているアルフレッドの姿にエイルは苦笑すると、魔法と剣の勝負については隊長の許可が下りればやってもいいと約束する。勿論、彼が可哀想というわけではなく、純粋な好奇心がそうさせた。

 エイルの好意にアルフレッドが感謝し嬉しがるが、リデルがアルフレッドの言葉を遮る。練習が終了したのならいつまでもこの場所にいるわけにもいかず、早く城に戻り本来の仕事に就かないといけない。リデルの意見にエイルとシンは素直に従うが、アルフレッドの様子がおかしい。

「どうした?」

「いや、何て言えば……」

「隊長?」

「こ、怖い」

「僕も、隊長は怖いよ。というか立派な人物だから、尊敬している。で、頼むのは一人でやる」

「エ、エイルは?」

「ついていくことはするけど、頼むのはお前。そもそもやりたいと言い出したのは、アルフレッドだし。というか、そういう話は後で。長話をしていると、副隊長が怒り出すかもしれない」

 後半に向かうにつれ、エイルの声音が徐々に小さくなっていく。エイルはアルフレッドに気付いて貰おうと、何度もリデルがいる方向に視線を送る。そのおかしな行動にアルフレッドはエイルが何を訴えているか理解すると、会話を中断し急いで城に戻ろうと言い胸を張る。

 ギリギリの部分でリデルの爆発を防げたのか、彼女は何事もなかったかのように振舞う。彼女から叱責を受けなかったことに二人は安堵の表情を浮かべると、同時に盛大な溜息を付く。彼等のわかり易い行動にシンは後方でクスクスと笑うと、二人の肩を同時に軽く叩いた。

「恐ろしい」

「隊長と副隊長は、凄いよ」

 立派な人物だからこそ、親衛隊を率いていくことができるのだろう。親衛隊は統率が素晴らしいほど取れ、立派と呼べる。だからこそその隊に入隊できたことを誇りに思わないといけないし、馬鹿なことを行なってはいけない。改めて知る現実に、三人は身震いを覚えた。