両者が同じ国に生を受けた場合、良きライバル関係になっていたに違いない。自身の腕前を高め合い、頂点を目指す。両者の名は他国にも知れ渡り、歴史に名を残していただろう。
しかし運命は、両者を切り離す。
互いにライバル同士と見なしても、両者は敵同士。それぞれの国を背負い、剣を構え合う。
ミシェルはルークに「ぶっ殺せ」と、命令した。だが、ルークは主人の命令に従う気配を見せない。
もし命令に従いシードの命を奪おうとしたら、切っ先で心臓を貫いてしまえばいい。だが、ルークはそれを行なうことはしない。彼もプライドを持っているので、命令よりプライドの方を重視した。
なかなか、決着が付かない。
いや、最初から結末は決まっている。
いいタイミングが掴めないのか、それとも白熱してしまった結果、本格的に勝敗を決めたいと考え方を変えたのか。名勝負という名に相応しい戦いに、漂う空気までが張り詰めてくる。
これも、互いのレベルが互角ということを証明しているのだろう、剣の交差が何度も続く。
一体、どれくらい続くのか――
互いに人間同士、勿論体力の限界というものがある。だが、今の彼等の姿を見ていると限界が無いように思えてくる。
だが、結末は突如訪れた。
一瞬、何が起こったのか誰もわからなかった。いや、わかっていたのは戦っていた当人達だろう。
赤い液体が、ポツポツと流れ落ちている。それを見たエイルは目を見開き、状況を懸命に受け入れようとする。
どちらが勝って、どちらが負けたか。
勝者が判明した瞬間、エイルは顔を顰める。そして、受け入れがたい事実に悪態を付いた。
「……何故」
今回の手合わせは、シードが負けるという結末であった。そう、負けたのはルークの方だった。
信じがたい事実にミシェルは立ち上がると、どうして負けたのかとルークを罵倒し汚い言葉で罵る。また地団太を踏み、子供の癇癪状態だ。それを勇める方も大変。ミシェルに殴れたり引っ掛かれたりと、此方は此方で別の意味で流血騒ぎとなってしまい、勇める側は散々な目に遭う。


