しかしそれ以上に、リデルは本気となったエイルと練習できることを本望と思う。相手の実力に、どれほど自分の魔法が通用するのだろうか――リデルはどの属性の魔法を使用するか特に指定せずに、自分が得意としている属性の魔法を使用していいとエイルに言い放つ。
エイルが得意としている属性は風で、リデルが得意としているのは水と氷。互いの行なう呪文の詠唱は同時で、魔法の使い手であったら二人が唱えている呪文から使用する魔法の威力を知ることができる。だが、アルフレッドとシンは魔法に関しての知識がないので、威力は把握できない。
ただ、どのような魔法を二人が使用するか、興味津々であった。特にアルフレッドは身を乗り出し二人の練習を眺め、シンに「危ない」と、注意を受けてしまう。その注意により思い出したのが、エイルとの約束。アルフレッドは慌てて定位置に戻ると、大人しくした。
詠唱が終了し、魔法が放たれる。
エイルはリデルの言葉に従い、手を抜かずに本気で魔法を使用する。今回使用した魔法は得意としている属性なので、制御が失敗することはなかった。風の魔法と氷の魔法がぶつかり合う。本来、互いの実力が拮抗している時、ぶつかり合った魔法は霧散するが、今回は違った。
リデルが使用した魔法よりエイルの使用した魔法の方が強く、完全に推し負けている。予想以上の魔法の力にリデルは動揺を覚えるが、精神を乱しては魔法が暴走することがわかっているので、冷静さを保ち続ける。それでも限界が近付いてきたのだろう、額に汗が滲み出す。
エイルが使用した風の魔法は突風というより暴風という言葉が似合い、リデル自身に襲い掛かる。負けてはいけない――という気持ちで必死に耐えるが、実力の差は明確でリデルは敗れてしまう。その影響で彼女の身体は後方へ吹き飛ばされるが、両脚に力を込め何とか踏み止まった。
「す、凄い」
「これが、本当の魔法」
これは練習であったが、実力者同士が本気で使用した魔法。凄まじい力のぶつかり合いはアルフレッドとシンの肌に鳥肌を立たせ、興奮を覚える。またこれにより、エイルとリデルを敵に回すとこれほどの威力がある魔法を使用されると、身を持って知ることとなった。
「これが、貴方の……」
エイルの実力を知ったリデルは、どうして彼が本気で魔法を使用したがらなかったか理由を知る。これほどの魔法を使用し、もし制御に失敗したらどうなってしまうのか。それを恐れ、使用を躊躇っていた。そう問い質すとエイルは頷き、躊躇っていたことを謝るのだった。


