「そんなに、凄いのか」
「凄いというものじゃない。メルダース時代、ちょっと強力な魔法を使って周囲を氷漬けにして……」
「マ、マジか!?」
「その後、炎の魔法で溶かした」
どのような切っ掛けで、魔法を使用したのか。これについては気恥ずかしかったので、敢えて詳細を伏せる。流石に魔導研究会の話について語るわけにもいかず、彼等の名誉も守らないといけない。だから練習中に起こった事件として、アルフレッドとシンに説明していく。
「大事には?」
「怒られた」
「やっぱり」
「そういうことがあるから、気を付けて欲しいんだ。制御ができないとわかったら、伝える」
「わかった」
「約束する」
真剣な表情で「周囲を氷漬けにした」と聞かされたら、信じないわけがない。それに自分も同じ目に遭いたくないと、素直にエイルの意見に従う。二人が信じてくれ自身の身を自身で守ると約束してくれたことに安堵するが、だからといって本気で魔法を使うのは躊躇い続ける。
しかし――
いつまでも躊躇うわけにはいかず、リデルに落胆させるわけにはいかない。エイルは嘆息した後、自分自身のなかなか決めることのできないウジウジとした部分を情けなく思ったのか、肩を竦める。エイルはアルフレッドとシンを一瞥すると、意を決したように頷いた。
◇◆◇◆◇◆
魔法の練習当日――エイルとリデルは、訓練所で互いに対峙する。彼等を見守っているのは見学を許可されたアルフレッドとシンで、二人はエイルの忠告を受け遠い位置で眺めていた。周囲に漂うのは張り詰めた空気で、それだけ魔法を使用するのに強い精神力が必要と知る。
リデルが第一声に発したのは、手加減をせずに魔法を使用するというもの。彼女の言葉に対しエイルは大きく頷くと、この練習で本気で魔法を使用すると宣言する。刹那、エイルが発したオーラが変化する。これこそ彼の実力なのだろう、リデルの肌に鳥肌が立つ。


