ロスト・クロニクル~後編~


「勿論、わかっている」

「副隊長を敵に回したら……な」

「斬られても、文句は言えない」

「いや、この場合は魔法の的だと思う。副隊長はメルダース在学中、優秀な生徒だと学園長が言っていた」

 それを聞いたアルフレッドが、顔を引き攣らせてしまう。以前の彼は、メルダースを憧れの学び舎と見ていたが、最近では別の一面の方を重点に置くようになってきた。確かにメルダースは優秀な生徒が集まっているが、その優秀な生徒が常識を逸脱するほど強すぎた。

 アルフレッドが出会ったメルダースの卒業生はエイルとリデルの二人だが、その二人のインパクトが強すぎ、卒業生全員がこのようなものかと認識してしまうが、強ち間違いではない。現に卒業生の大半が各地で活躍し、重要なポジションで実力を発揮しているほどだ。

「副隊長の魔法の威力は?」

「知らない」

「知らないって、わからないのか?」

「わかるもわからないも、魔法を使用しているのを見たことがない。見なければ、力量はわからないよ」

「ああ、そうか」

「だが、お前も強いだろう? 試験の時、魔法を使用しただろう。あの時も、威力が凄かったぞ」

「あれは、本気じゃないし手加減している。本気で使用したら、周囲に被害が出てしまうから。それに大人数が集まっていたし、全員が全員魔法の知識を持っているわけじゃないから」

 真顔で平然と言い放つエイルに、アルフレッドとシンは言葉を失う。試験の時に使用していた魔法も相当の威力があったように思えたが、彼の話では手加減をしていたという。もし本気で魔法を使用していたら、どれほどの威力があったというのか。改めて知る魔法の力に、二人は身震いを覚える。

 実力者同士が使用する魔法がぶつかり合った時、どのようなことが起こるというのか。アルフレッドは興味本位で練習を近くで見たいと言ったが、本当は相当危険なのではないかと気付く。それでも見たいという思いは薄れることはなく、完全に怖いもの見たさだった。

 その時、扉が叩かれリデルが姿を現す。突然の副隊長の登場にアルフレッドとシンは、反射的に背筋を伸ばす。一方エイルはシードとの話が付いたのだろうと予想し、彼女からの言葉を待つ。彼の予想は正しいもので、リデルが訪れたのは魔法の訓練が許されたという話をする為であった。